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復興支援助成金
被災をプラスに変える力が人間にはある
RQ被災地女性支援センター
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「RQ被災地女性支援センター」の活動を紹介します。
編み物教室など女性のための復興支援活動
震災直後から、行政や地元の支援団体といっしょに避難所を回るボランティア活動をしていた中で、避難所の生活では女性の視点が欠けていることに問題意識を抱いたメンバーが集まり、RQ被災地女性支援センターは2011年6月、女性や社会的弱者の視点に立った支援を行う組織として発足しました。
当初は、ハンドマッサージやフェイスマッサージ、悩みの聞き取りを実施。女性が集まるきっかけを提供すると、被災者同士での交流が自発的に行われることがわかりました。昼間の避難所には、高齢者のしかも女性が残されがち。聞き取り調査では、ものづくりをしたいという要望が多かったことから、編み針一本で始められる『編み物教室』を企画・実施することにしました。
石本めぐみさん(後列中央)
初めは主に仮設住宅の集会所で活動していましたが、対象を広げるため、公的なスペースを借りて活動する機会を増やしています。その理由を、RQ被災地女性支援センターの石本めぐみさんは、「仮設住宅の集会所だけで実施すると、みなし仮設にいらっしゃる方や、家が残った方が参加しづらいという事情がありました。被害状況の差がわだかまりになっていたのです」と語ります。
RQ被災地女性支援センターという外部の人間が、家を失って仮設住宅で暮らす人たちと、仮設住宅に入るまでには至らなかった被災者との間に入ることで、風通しが良くなっているのだと言います。地域のしがらみにとらわれず、さまざまな境遇の人がいっしょに活動しています。
例えばNPO法人生活支援プロジェクトKとの共催により、昨年9月から定期的に開催している気仙沼のはしかみ交流広場での教室では、開始当初の参加者は、わずか2、3名。少しずつ口コミで増えていき、今年11月に開催された編み物教室には、20名ちかい女性たちが参加。この月に誕生日をむかえた参加者には、モヘヤの毛糸が一玉プレゼントされました。
和気あいあいと進められる編み物教室の様子
参加者は生い立ちも身の上もさまざま。香港から来たボランティアが、この教室に来て歌を歌ってくれたとき時には、こんなエピソードもあったそうです。
「ある女性が泣き出してしまったんです。その方は肉親を亡くされたのですが、震災時には、あまりに突然の別れに涙を流すことすらできなかったそうです。1年以上の時間が経過し、音楽を聴いて心が解放され、ようやく感情を表に出すことができたのですね」(石本さん)
避難所暮らしが6か月に及んだ80歳の女性は、暗いことばかり考えてしまう中、編み物に癒されたと言います。作品を作り、人にプレゼントすると喜ばれ、それがまた励みになって、明るい方向に考えられるようになったそうです。
「編み物教室があって良かった」と毎回おっしゃって帰る方もいれば、「編み方を示した編み図は宝物」とおっしゃる方もいるそうです。最初は友人の誘いで嫌々ついてきたのが、手を動かしているうちに、やる気スイッチが入って夢中になる方もいると言います。
活動を始めたばかりの頃は、参加者の誰もが支援物資の洋服を身に付け、化粧気もない状態でしたが、編み物教室を開いてから1年以上経ち、おしゃれに気を使うことができるようになってきました。
南三陸や気仙沼では単なる教室ではなく、販売を目的にした手仕事のコーディネートを実施。スキルアップ講座としてカラーコーディネート講座を開催したところ、作品のセンスが格段に良くなったそうです。
「編み物は単なるツールにすぎません。女性たちはお互いに話をし、交流することを望んでいるのです。今回の震災は大変不幸なことですが、被災してもそれをプラスにする力が人間にはあることがわかりました。これは活動を通じて得た、一番の成果です。一人では難しくても、仲間と集うことで明るく前向きに考えられる。ほかの被災地域にも、このような活動を広げていきたいと思っています」(石本さん)
希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。RQ被災地女性支援センターの活動は続きます。