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復興支援助成金
子どもたちの視点で被災地のいまを伝える
3/11 Kids Photo Journal
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「3/11 Kids Photo Journal」の活動を紹介します。
「写真を残し思いを伝えることは自分の使命」
事務局の阿部真紀さん
3/11 Kids Photo Journalは、被災地のいまとこれからを子どもたちの視点から見て伝えていくことを目的に、震災後に立ち上がった団体。「震災を風化させないよう、写真を通じて情報を発信していくことが大切だと考えています」と事務局の阿部真紀さんは話します。
代表を務める後藤由美さんは、かつて津波に遭ったインドネシアのアチェで子どもたちが写真と文章で記録を残し自らの思いを人びとと共有する「In Sight Out」プロジェクトを行った経験があります。東日本大震災後、日本での活動の必要性を強く感じて、長く暮したタイから帰国。被災地の子どもたちと活動を共にするようになったのです。
岩手、宮城、福島の3県で、約30名が参加。子どもたちはテーマを決め、写真を撮影します。写真編集者も務める後藤さんが子どもたちに、写してきた写真の中から、どれを使い、どんな順に並べると見る人に自分のメッセージが伝わるのかといった、情報伝達技術も指導しています。
技術指導を受ける子どもたちの様子
子どもたちは撮影の際、テーマに関連する人に会い、話も聞きます。単に見たものを写すだけではなく、被写体の内容や背景を知ることで、作品に物や人との関係性が写し出されます。
<「陸前高田松原の一本松」の取材より>
[作品No.01 村上風香(陸前高田)]
Photo by ©Ayaka Murakami/Rikuzentakata/311 Kids Photo Journal
[作品No.02 菅野郁弥(陸前高田)]
Photo by ©Fumiya Kanno/Rikuzentakata/311 Kids Photo Journal
[作品No.03 菅野春来(陸前高田)]
Photo by ©Haruki Kanno/Rikuzentakata/311 Kids Photo Journal
「今夏、陸前高田市の伝統的なお祭りである『けんか七夕』の話を関係者に聞いた時のことです。祭のいわれを『山車の飾りつけは、亡くなった人たちが迷わないで家に帰るための目印なんだよ』と説明して頂きました。お話しされた方も、聞いている私たちも、涙が止まりませんでした。大好きなおじいちゃんを亡くした子どもがインタビューと撮影をしたのですが、普段はしり込みしてしまいがちな彼がお聞きした話をしっかり受け止め、作品を作ってくれました」(阿部さん)
<「けんか七夕」を撮影した作品とフォトジャーナルより>
[作品No.04 大谷蓮斗(陸前高田)]
Photo by ©Rento Otani/Rikuzentakata/311 Kids Photo Journal
[作品No.05 大谷蓮斗(陸前高田)]
Photo by ©Rento Otani/Rikuzentakata/311 Kids Photo Journal
[作品No.06 大谷蓮斗(陸前高田)]
Photo by ©Rento Otani/Rikuzentakata/311 Kids Photo Journal
宮古市の中学生が世界の子ども写真コンテスト「Children's Eyes on Earth」に応募した作品は、世界90カ国から4000点集まった中の最終50点に選ばれ、海外で展示されることになりました。
<世界の子ども写真コンテスト出品作品「小岩井の一本桜」(作品No.07)と撮影者の赤前支局長・佐可野未来さん(同08)>
[作品No.07 佐可野未来(赤前)]
Photo by ©Mirai Sagano/Akamae/311 Kids Photo Journal
[作品No.08 大谷風香(赤前)]
Photo by ©Fuka Otani/Akamae/311 Kids Photo Journal
3/11 Kids Photo Journalのフォトディレクターであり、自身もフォトジャーナリストの佐々木康さんは、「見えないもの、知らないことを、見ないまま、知らないままで過ごして良いのか」と子どもたちに問いかけます。
フォトジャーナリストの佐々木康さん
「人がやってくれることを、そのまま受け止めるだけでなく、自分から見ようとし、知ろうとすること。自分の足で見に行き、話を聞くこと。そこから見えてくるものがあり、それを伝えることを覚えて欲しい。そんな意識を持った子どもたちを増やしていきたいと思っています」(佐々木さん)
気仙沼から参加していた高校生の一人は、「被災地のいまを写真で伝えることは自分の使命」だと話します。
3/11 Kids Photo Journalのいまの悩みは、長期にわたる活動継続を支える活動スペース、マンパワーの確保と資金面。最後に今後の抱負を阿部さんに聞きました。
「写真を撮る前に、見るというプロセスがあります。子どもたちには、自分で現実を見て感じたことを大切にして欲しい。その感動を伝える力を培って欲しいと思っています。子どもたちの3/11 Kids Photo Journalでの経験が、被災地にとって有形無形の糧となることを願っています。また、子どもたちが写した写真を多くのみなさんに見て頂きたいと思います。昨年は本をつくりました。『子どもたちの写真を見ると元気になる』と、被写体となって頂いた方々にもとても喜ばれました。今年は写真新聞をつくり、被災地に配ろうと考えています。英語版もつくり、海外へも発信していきたいと思っています。子どもたちの写真を通じて、被災地の人たちとの心の距離が縮まることを期待しています」(阿部さん)
希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。3/11 Kids Photo Journalの活動は続きます。