復興支援助成金

民間ならではの生活相談窓口
NPO法人 くらしのサポーターズ 復興支援助成先紹介 File 7

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「くらしのサポーターズ」の活動を紹介します。

被災後のストレスが生むさまざまなトラブル

くらしのサポーターズは、主として岩手県宮古市や山田町、岩泉町、田野畑村を対象に、被災者の生活相談のための「あすからのくらし相談室・宮古」を開設。震災から1年半が経過し、被災者だけでなく一般の方々からの相談も増え、月に20〜30件の相談が来ていると言います。

相談内容は、被災後仕事が見つからず経済的に困窮していること、職場や近隣での対人問題、家庭内暴力をはじめ家族間のトラブルなど。さまざまな相談が寄せられます。

副理事長の吉田直美さんは盛岡からバスで通勤。もともとは、盛岡市役所で消費者の多重債務相談を担当していました。

「岩手県では嫁姑問題といった、伝統的な家族問題もあります。比較的我慢強い土地柄だと思うのですが、震災後、仮設住宅の狭い空間での暮らしを強いられ、通常よりもかなり強いストレスを感じるのでしょう。『耐えられなくなった』と、お嫁さんが相談に見えたこともありました。仮設住宅の隣の音が気になるなど、過敏になっているのもストレスが原因のように思います」


吉田直美副理事長

あすからのくらし相談室では、岩手県のパーソナルサポートモデル事業も実施。このような事業を全国展開する動きもあるそうですが、「相談員は誰でもできるわけではありません」と吉田さんは語ります。

「一番には弱い人の立場がわかる人柄、人の話が聞ける能力、そこに専門的な知識と経験が加味されるということだと思います。今後も相談件数が増えてくることが予想されますので、相談員を育成していくことも課題の一つです」。

一人ひとりが経済的社会的に自立した社会を

成果を実感できるのは、相談に来られた方が元気を取り戻した姿を見ることだと言います。表情が全く変わって、声を掛けられるまで気がつかないくらいの方もいらっしゃるとか。お世話になったお礼にと、ボランティアで相談室の手伝いに来る方もいらっしゃるそうです。

「相談室に来られる方はまだ良いのですが、問題を抱えて引きこもっている方をケアしていかなければなりません。待っているだけでは十分でなく、地域の方に気づいてもらうことが解決の糸口になるのだと思います。またもう一つの問題として、発達障がいや精神疾患の人が増えているようです。一般就労と障がい者就労の中間。今日は働けるけれども明日は分からない、といった働き方を容認する中間的就労を厚生労働省でも検討しています。宮古で、農業と組み合わせて、パーマカルチャーの理念を実践し、どんな人にも居心地の良い場をつくり、解決策を探れればと考えています」

くらしのサポーターズが目指すのは、一人ひとりが経済的社会的に自立した社会。今後の抱負を吉田さんは次のように語ります。

「経済的自立とは、極端には生活保護でも可能。一方、社会的自立は難しい。社会的自立とは、その人の能力に見合う役割・居場所を社会の中に確保するということです。それをサポートするためにも、相談室は少なくとも10年は続ける必要があると思っています。行政と責任を分担し、民間の機動性が失われないかたちで続けていきたい。運営をいつまでも寄付には頼れませんから、市民が少しずつ負担して困っている人をお互いに支え合う市民ファンドの創設も検討していきたいと考えています」

「希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。くらしのサポーターズの活動は続きます。

あすからのくらし相談室外観

■『くらしのサポーターズ』webサイトはこちら

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