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復興支援助成金
農業の再生、コミュニティの再生
ReRoots
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ReRoots」の活動を紹介します。
長期的視点から生活建て直しを支援
広瀬剛史さん
震災時、仙台の川内コミュニティセンターに避難した学生や地域の住民が避難所の運営ボランティアとして活動しました。それから1カ月ほど、仙台社会福祉協議会の災害ボランティアセンターにも登録して津波被災地のボランティアにも従事。このグループが昨年4月半ば、農業支援を柱とした支援を行うために立ち上げたのが『ReRoots』です。避難所を運営していた当時からのメンバーの一人、広瀬剛史さんは、名前の由来を「ReRootsの“Re”は復興を、“Root”は地域に根付く、“s”は仙台を意味。Re(=再び)Roots(=根源)である“3.11を忘れない”と言う意味も込めています」と話します。
メンバーは30数名。授業が再開した今は、学生は空き時間を利用してシフトを組み、運営に参加しています。ReRootsが主催するボランティアプログラムでは、子どもからお年寄りまで、また学生や社会人、主婦、市民団体、ツアーなどを問わず、参加希望者は誰でも受け入れ。ReRootsがボランティアと農家のマッチングを行い、月に1,500~2,000名が参加しています。
「従来のボランティア活動では、物が必要なところには物質の支援、瓦礫が残っていれば撤去、あるいは仮設住宅でイベントを開いたりなど、ややもするとその場しのぎになりがち。しかし長期的視点から被災者が求めているのは、生活の建て直しです。やはりそこを支援すべきと考え、農家の職場である農地再生に取り組むことにしました。具体的作業としては、津波の被害に遭った畑の瓦礫撤去を中心に活動。今年7月のボランティアハウス設立1周年の日には、支援した農家の方々と、常連として参加しているボランティアの人たちが、お世話になったお礼にと、サプライズでバーベキューパーティを開いてくださいました。皆さん忙しい合間を縫って、われわれに知られないように準備してくださったんです。感激しました」
ReRoots運営のボランティアハウス外観。自転車・倉庫など資材はほとんどが寄付されたもの。周りには津波で流出した防風林を作品にすることで復興の願いを込めたチェーンソーアートが並ぶ
農業を再生することで地域の活力を取り戻したい
「何と言っても作物が実った時が一番嬉しいですね」と広瀬さん。ReRootsファームの野菜を商品化してくださる方も現れ、仙台朝市でも11月10日から毎週土曜日、被災農家の野菜を販売するお店を出せることになりました。
「国や自治体で六次産業化や農業法人創設などを検討していますが、昔ながらのやり方を継続したい農家との間に意識の開きがあるようにも感じます。ReRootsが支援対象の農家を考える際、一番大事にしているのは、農地を再生しようとする気持ち。地元農家の力を引き出すことがわれわれの役割だと思っています」
ReRootsでは役所の復興計画を情報収集し、農業再生・景観形成・コミュニティ再生の3つのテーマごとにメンバー同士で復興計画案を作成。そのうえで今後、地元の方々と合意形成しながら地域づくりに向かえるように活動する方針です。
「災害指定区域では、住居移転が予定されています。中には自宅から4~5km離れた農地に通わなければならなくなる方も。加えて後継者が見えない中での新たな設備投資はハードルが高い。高齢者には特に、厳しい状況が続きます。農家は生産のプロですが、さまざまな角度から支援できればと考えています」
震災前、広瀬さんは寿司屋に勤務。店舗は地震で営業できなくなり、職場を失いました。
「先日久しぶりにメンバーに寿司を握りましたが、手首が固くなっていて、思うように握れませんでした。鈍っていますね」
今は、若林区の農業の魅力を引き出したくて、ReRootsの活動に専念したいと考えています。
「10年は継続していきたい。今後は農業を通じて学ぶファームステイにも取り組んでみたいですね。市民農園をつくり、大学生の農業インターンや小中高校生を対象に農業研修も受け入れたい。子どもたちに農業に興味を持ってもらうには、食育や防災、自然環境、景観、コミュニティなどが大事なテーマになってくるでしょう。農業を再生しながらコミュニティの再生に取り組み、農業で収益を上げ地域に還元できる、自立した農業法人をつくりたいと考えています」
希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。ReRootsの活動は続きます。