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復興支援助成金
“学びの灯”を消さないために
特定非営利活動法人 アスイク/チーム山大(山形大学福島真司研究室有志災害ボランティアチーム)
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「アスイク/チーム山大」の活動を紹介します。
いつのまにか魅力に引き込まれ
アスイクは、学校の再開時期がまだ不透明だった昨年3月末、学習の遅れが懸念される子どもたちに対し、避難所での教育支援を開始しました。大橋雄介代表理事は、「避難所ではスペースを確保するのが大変でした。体育館の入り口に机を置いたり、ブルーシートの上で行ったり、支援物資の段ボールを机代わりにするなど工夫しました」と当時を振り返ります。
昨年夏にイベントを開催した際、山形大学の福島真司教授が参加。この出会いをきっかけに、福島教授の研究室の有志が集まって「チーム山大」を結成し、アスイクの活動に参加するようになりました。「山形大との連携ができたことはありがたかったです」と大橋さんは話します。
山形大学1年生の辻幹生さんは、被災地支援としてそれまで、宮城県・桂島の復興プランづくりにかかわっていましたが、アスイクの活動に参加した友人の薦めをきっかけに参加しました。「初めは夏休みの空き時間に参加してみようと気軽な気持ちで参加しましたが、いつのまにか魅力に引き込まれていきました」と辻さんは語ります。
「学校にも、塾にもない、アスイクの雰囲気に魅かれました。アスイクでは、サポーターと子どもたちはニックネームで呼びあいます。上下関係ではなく、お互いに支えあう対等な関係です。子どもたちとの距離感が、密な感じがします。初めは一方的に教えるだけでしたが、子どもたちから声を掛けられるようになり、信頼を得られたと実感しました。子どもたちと接する時は、たとえどんなに疲れていても、ネガティブな気持ちを出さないようにしています。むしろ忙しい時でも、子どもたちとふれあうと癒されます」(辻さん)
「子どもの支援は、家族にも影響する」と大橋さんは言います。
アスイクの大橋雄介代表理事(左)とチーム山大の辻幹生さん
「各地からの被災者が混在しコミュニティの形成が遅れている仮設住宅は少なくありません。そんな仮設住宅に、福島から母と子で避難してきた方がいました。母親は顔色も悪く、明らかに疲労が見られました。家庭の落ち着かない状況が影響してか、子どもは粗暴になっていました。担当サポーターが粘り強く接していると毎週通うようになり、あるイベントに親子で参加したことをきっかけに、母親も明るさを取り戻しました。私たちの活動は、家族にも影響する活動であることを実感しました」(大橋さん)
現在、アスイクの学習教室は8ヵ所。約100名の子どもたちが利用しています。当初は小中学生が対象でしたが、今は未就学児童から高校生まで拡大。仮設住宅の子どもたちだけでなく、震災で経済的に苦しい家庭の子どもたちも分け隔てなく受け入れています。
アスイクの学習教室内の様子
サポーターの登録者は約200名。2割は社会人で、実際に稼働しているのは約100名。子ども一人に1名のサポーターがつくのを基本としています。
「山形大の参加者は12名。多い時には30名近くいましたが、残念ながら減ってしまいました」(辻さん)。一方で、子どもたちからの需要は増える一方。「自分たちの大学だけでなく、宮城などのほかの大学も巻き込んで、サポーターの獲得に協力したいと思っています」と辻さんは話します。
最後に大橋さんに今後の抱負を聞きました。
「残念なことですが、被災者が全国からの支援を受けていることで、差別を受ける状況が起きています。差別が起きない環境をつくっていきたい。また子どもたちを、人の気持ちを理解し、どのような人も受け入れられる、差別をしない人間に育てていきたいと思っています。おそらく被災地への助成金支援はあと2年ぐらいがめどかもしれません。将来を見据え、活動を継続していくため、eラーニングと提携した収益事業などの立ち上げも検討中です」(大橋さん)
希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。アスイクの活動は続きます。