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復興支援助成金
失語症に対する社会の正しい理解を促すために
NPO法人 全国失語症友の会連合会
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「全国失語症友の会連合会」の活動を紹介します。
リハビリライブで引きこもりを予防
“失語症”は、脳卒中や事故などが原因で、大脳の言語中枢が異常をきたし、言語の働きがうまくいかなくなる病気。一般社会での認識が高くない一方で、全国で52万人余りの患者がいると推定されています。発病すると、話すこと、書くこと、計算すること、話を聞いて理解すること、読んで理解することなどができなくなるため、コミュニケーションが取りにくくなります。ある日突然発症し、とまどうと共に、あきらめて内にこもりがちになる方も少なくありません。
被災地では特に、仮設住宅などにおいて失語症患者の引きこもりが心配されます。全国失語症友の会連合会では、『災害時の失語症患者の支援を考えるシンポジウム』を開催すると同時に、被災地の失語症の方々に実際に少しでも外に出る機会を提供しようと、今年度は4回、失語症リハビリライブを開催することにしました。
常任理事の園田尚美さん
被災地でのリハビリライブを企画した常任理事の園田尚美さんが、全国失語症友の会連合会の活動を知るきっかけとなったのは、ご主人が失語症を患ったこと。「リハビリライブを通じて一人でも多くの方々に失語症を理解していただきたい」と話します。
10月6日に宮城県気仙沼で開催された失語症リハビリライブには約60名が参加。会場ではまず、患者さんとボランティアがペアを組みます。家族も参加していますが、家族とペアになるのは禁止。阿吽の呼吸で意思が通じてしまうので、声を発するリハビリにはならないからです。
ペアを組んだ患者さんとボランティアはいっしょに、自己紹介ではなく他己紹介をしたり、音楽療法士の伴奏で童謡を歌ったり、セロハンを飛ばしたり、エアーキャッチボールをしたりして楽しみました。ライブ終了後は、家族相談交流会、悩みや相談なども含めた意見交換をしました。
リハビリライブの様子
ボランティア参加者から感謝の声も
この日の講師は、ご自身障害を患いながらも言語聴覚士の世界で活躍する小野寺清栄先生。おどけた帽子も患者さんに注目させるための演出です。
小野寺清栄さん
「患者さんは移動が大変。まずはイベントに参加できたことが、物理的にも精神的にも大きな一歩です。参加者が飽きないメニューを考え、皆さんに楽しんでもらい、リハビリの意欲につなげていただきたいと思っています。ボランティアの協力なしにはこうしたイベントは成り立ちません。皆さんに感謝しています」(小野寺さん)
この日のボランティアには、労働者協同組合(ワーカーズコープ)の介護職員養成科の受講生が参加しました。「参加者から、『実際の仕事の改善に役に立ちました』と声を掛けられ、とてもうれしく思いました」と園田さんは次のように話します。
「今まではご家族のほうばかりを向いてプランを考えてきたそうですが、これからは本人の意思を反映したリハビリプランに改善していきたい、と。そう聞いてとてもうれしくなりました。また、言語聴覚士を目指す学生さんからは、直接患者さんと接する機会をもてて失語症を深く理解できたと感謝されました」(園田さん)
最後に園田さんに、今後の抱負についてお聞きしました。
「ある文字を読めない患者さんがバスの料金を聞いた時、運転手さんから、『そこに書いてある』と言われたことがあったそうです。悪気はなかったのでしょうが、不用意な一言が患者さんを傷つけることもあります。失語症には、まだまだ社会の理解が必要です。失語症によって仕事が続けられなくなり生活に困る患者さんも大勢います。国や行政の手厚い支援が必要なのですが、制度が改善されるには時間がかかりそう。まずは、身近な人に失語症の実態を理解していただき、一人でも多くの方に手を差し伸べていただきたいと思います。将来的にはリハビリライブを全国で展開するのが夢ですね」(園田さん)
希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。全国失語症友の会連合会の活動は続きます。