復興支援助成金

音楽を通じて“やさしい未来を”
特定非営利活動法人 みんなのことば 復興支援助成先紹介 File 4

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「みんなのことば」の活動を紹介します。

音楽は、世界共通のことば

みんなのことばの活動開始は、2009年3月。世界共通のことばである音楽の演奏会を通して、平和な社会づくりを目的に、“世界がひとつになりますように”の願いを込めて結成されました。

主として東京で幼稚園や保育園、子育て支援施設、障がい者支援施設などにクラシックコンサートを届ける活動をしていましたが、昨年の震災をきっかけに、被災地のためにできることを考え、まずは震災から1か月後の4月16日、東京でチャリティコンサートを実施。収益金を被災地で活動する公益社団法人に寄付しました。「その際、来場者から『音楽の力の大きさを感じた。ぜひ被災地でも演奏を』と多くの声をかけていただき、現地での活動を開始しました」と渡邊悠子代表理事は次のように話します。

「最初の活動は昨年の6月でした。まだ大半の方が避難所生活をおくり、衣食住もままならないさなかのこと。『音楽どころではない』と反感を買うのではないかと心配しましたが、ありがたいことに喜んで受け入れていただくことができました。うれしかったですね」


釜石市のコンサート終了後。後列一番左が渡邊悠子代表理事

みんなのことばが開催する『みんなのコンサート』は、“聴く”“歌う”“演奏に参加する”の3つを取り入れ、音楽の持つ力、効果を最大限に発揮できるプログラムとしています。“聴く”ことで緊張を緩め、リラックスさせる。“歌う”ことで、感情を発散し、元気に。“演奏に参加する”ことで演奏家と聴衆だけではなく、聴衆同士をも一体にしてコミュニケーションを深めています。

「コンサートでの参加者の表情はさまざま。保育園の子どもたちはいっしょに歌ったり、手をたたいたりとストレートに大はしゃぎ。養護施設では、人前に出たがらず、会場の隅でうずくまっていた子どもが、音楽が始まると満面の笑みを浮かべて、最後には飛び上がって喜びを体中で表現していました。それから仮設住宅では普段は大きな声を出せません。コンサート会場では、思いっきり声を出して歌ったり、笑ったりできるので、被災者の方のストレス解消にもなっています。また、仮設住宅では新しいコミュニティーになっていることが多く、一人暮らしのご年配の方などにとって、コンサートが家から出るきっかけになることもあります」

9月に陸前高田市の仮設住宅に併設されるコミュニティー図書室で開催されたコンサートでも参加者が演奏に熱心に耳を傾けていた

子どもたちの将来の夢や被災者の生きる希望に


9月には、陸前高田市の保育園でもコンサートを開催。終了後には喜ぶ子どもたちが演奏者に駆けつけた

みんなのことばは現在、活動に賛同するプロの音楽家約20名が協力してコンサート活動を実施しています。コンサートでは、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの4つの楽器を使って演奏。耳なじみのあるクラシックのほか、保育所ではアニメの主題歌を演奏したり、仮設住宅では発声練習をしたりと、訪問する先々で曲や内容を変えています。

「『ふるさと』をリクエストされることが多いのですが、流された町への思いが痛いほど伝わってきます。たくさんの方が涙を流しながらいっしょに歌ってくださいます。この活動を通して、私たちにとっても、とても大切な一曲になりました。コンサートが終わると、皆さん笑顔でお帰りになるので、ホッとすると同時に、音楽の力ってほんとにすごいなとあらためて実感しています」

昨年6月から今年の9月までに、被災地の保育所・介護施設や避難所・仮設住宅を57カ所回り、約4,000名の方々に音楽を届けてきました。「被災地に支援に行きたくても行けない方がいる中、ある意味代表として活動させていただいていると思っています。“私たちは忘れていません”というたくさんの方の思いも込めて、今年に入ってからも、できる限り同じ場所にも訪問するようにしています」と言います。

今後の抱負については、「ある保育園の園長先生からは、『演奏家のお兄さん、お姉さんに憧れて、将来は音楽家を目指す子供たちが出てくるかもしれない』と、プロの音楽を通して情操教育の効果を期待する、ありがたい声もいただきました。音楽を楽しみ、リラックスしていただくだけではなく、小さな子どもたちの将来の夢や被災者の生きる希望にもつながるような活動を続けていきたいですね」と渡邊さん。

希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。みんなのことばの活動は続きます。

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