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復興支援助成金
命を守ることへの崇高な思いと意気込み
NPO法人 日本ホスピス・在宅ケア研究会
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「日本ホスピス・在宅ケア研究会」の活動を紹介します。
悲劇を繰り返したくない
日本ホスピス・在宅ケア研究会は、がんや在宅ケアなどの医療や福祉の諸問題について考えるため1992年に設立されました。ご自身看護師でもある黒田裕子副理事長は、阪神・淡路大震災の際、市立病院に勤務。自らも4年3カ月仮設住宅で暮らすかたわら、退職して仮設住宅の住民の支援を開始しました。トルコ地震や四川大地震の際には、支援のために現地へ駆けつけた経験も。東日本大震災では、発生翌日に被災地に入り活動を開始しました。
黒田裕子副理事長
「阪神・淡路大震災では孤独死が問題になりました。東日本大震災では同じ悲劇を繰り返したくない。そう考え、仮設住宅の住民一人ひとりを見守っています」(黒田さん)
活動拠点である宮城県気仙沼市の面瀬中学校の仮設住宅では、看護師が365日、24時間常駐し、住民の医療・福祉なんでも相談を行っています。神戸から来た看護師の土江孝子さんは「集会所に寝泊まりし2週間程度のローテーションで対応しています」と語ります。
神戸から来ている看護師の土江孝子さん
「昼間は地元看護師と2人で、こちらから訪問したり、集会所でお茶会を開き、コミュニケーションを図っています。集会所には、毎日足を運んでくれるお年寄りもいらっしゃいます。看護および一般大学の学生たちがボランティアに参加。机の上では学べない現場の厳しい実態を肌で覚えられると感動し、学んだことを伝え活かしていくと心強く述べて帰り、感謝されています」(土江さん)
この日も3人のお年寄りが集会所を訪れ、歌ったりおしゃべりをしたり、“お茶っこ”を楽しんでいました。
集会所での歓談の様子
お互いに見守り合うコミュニティーづくり
「看護師と一口に言っても、この仕事は誰でもできるわけではないんですよ」と、黒田さんはその難しさを話します。
「判断力、コミュニケーション力、人を見る力、声なき声を聴き、異常を発見する力など、リーダーとしての能力も必要です。平日の昼間不在の家には、休日に訪問。勤めているから元気とは限りませんから」(黒田さん)
実際に、心筋梗塞で倒れた住民を助けたこともあったそうです。
「今までの広い家から仮設住宅に移り、ストレスがたまって病状を悪化させる住民も少なくありません。ある朝の巡回時のこと。中で人が倒れている様子がありました。行政に話してもなかなか鍵を貸してもらえない。必死にお願いして開けてもらい、ベッドとテーブルの間に倒れていた住民を助けることができました。この出来事から行政も私たちの活動を信頼してくれるようになりました」(黒田さん)
民生委員と自治会とも協力し、仮設住宅だけではなく、地域に住む住民の訪問ケアも始めています。医療機関の被災で、難病やがんの治療を自宅で行う人も。在宅で医療や福祉に悩む患者さんが増えているそうです。
日本ホスピス・在宅ケア研究会ではそのほか、コミュニティの自立も支援。仮設住宅では、小学生がお手本となり、毎朝ラジオ体操を実施しています。時には、参加者の方に各戸に配布する会報誌を配布。配りながら、安否確認もしていただいている。“同じ洗濯物を3日以上干していないか”、“新聞がたまっていないか”などを具体的にチェックしてもらうそうです。住民同士、お互いに見守り合うコミュニティづくりに努めているのです。
「ごみもチェックします。例えば、アルコール類が増えている場合は要注意です」(黒田さん)
週間チェック一覧表
また一覧表で毎日、住民がお茶会に出てきたか、ラジオ体操に参加したか、在宅していたかなど、住民一人ひとりの日常の行動を細かくチェック。少しの変化も見逃さない徹底ぶりは、黒田さんの命を守ることへの崇高な思いと意気込みを感じます。集会所には台所がありますが、住民の方がお夕飯を差し入れてくれることも。地域コミュニティにすっかり溶け込む黒田さんは、148世帯の住民の顔と名前、健康状態をすべて覚えているそうです。
「阪神・淡路大震災では、2年目に孤独死が多くなりました。移転の話などが出始め、将来を悩む住民が増えてくるころ。心を強くし、コミュニティの強化が必要な時期と言えます。移転後には、また新たなコミュニティを作らなければなりません。いずれはボランティアを頼らない、自分たちのことを自分たちで守っていく自立した社会、また地域住民や社会資源、福祉資源を活用した街づくりが今後の目標です」(黒田さん)
希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。日本ホスピス・在宅ケア研究会の活動は続きます。