復興支援助成金

長期支援のため「三陸ひとつなぎ自然学校」を設立
特定非営利活動法人 ねおす 復興支援助成先紹介 File 24

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ねおす」の活動を紹介します。

子どもたちに教えたいのは、生きる力

ねおすは、北海道での自然体験や交流プログラムに取り組むNPO。メンバーの一人が岩手県釜石の出身だったことをきっかけに、これまでの経験とノウハウを活かして被災地での支援活動を開始しました。事務局長の齋藤学さんは、現地に初めて入った当時を「時間の流れ、各地から次々と提供される物資、避難所のストレス、めまぐるしく変わる状況など、とにかく全く経験したことのない圧倒されるような感覚でした」と振り返ります。


子どもたちとの活動の様子

北海道のメンバーからも「ボランティアに参加したい」というたくさんの声が上がり、被災地に入りました。「何をすればよいのかわからなかった人たちが、ほんの短時間のボランティア体験で自ら判断して動けるようになっていくのを実感しました」と齋藤さんは語ります。

ボランティア活動と並行し行ったのが、避難所の子どもたちへの遊び場の提供と自然教室。仮設住宅に移ってからも、遠方の学校に通学を余儀なくされている子どもたちは、放課後に友達と遊ぶことさえできません。そこでねおすは子どもたちを、平日は集会所へ、土日は市内の山や川に連れて行きました。

「私たちが子どもたちに教えたいのは、生きる力。また、自分たちが生まれた釜石の歴史や文化を学び、良さを知ってもらいたい。たとえ進学や就職で釜石を離れても、いつかまた戻ってきて欲しいと思っています」(齋藤さん)

子どもたちがずっと住みたいと思う魅力ある街に

今年4月、ねおすから独立するかたちで釜石出身の2名の若者が立ち上がり、「三陸ひとつなぎ自然学校」を設立。「ねおすでは、三菱商事復興支援財団の助成金で、三陸ひとつなぎ自然学校の事業基盤を強化し、この自然学校の法人化に向け事業展開しています」」と齋藤さんは語ります。

この教室の代表を務める伊藤聡さんは、職場と家が被災。「何から始めたらいいかすらわからなかったが、ボランティアのみなさんに助けられ、自分も被災者を支援する側にまわろうと考えました。釜石に足を運ぶボランティアの気持ちを無駄にしたくないと、ボランティア受け入れの活動を始めたところ、ねおすと出会いました」と伊藤さんは話します。

伊藤さんがいま力を注ぐのが、地域復興ツーリズム。ボランティアに自然体験や地域の方との交流の要素を加えたツアーです。

地域復興ツーリズムの様子

「ボランティアによる力仕事は、残念ながら一過性のものになりがち。わたしたちの地域復興ツーリズムでは、漁業や畑仕事を手伝ったり、郷土料理をつくったりします。地元の方とふれあうことで、地元とボランティアが長くつきあっていく関係ができることを期待しています」

将来的には自立した継続的な活動のため、このツアーを収益事業の一つに育てていきたいと考えています。

三陸ひとつなぎ自然学校のスタッフは現在、4名。その一人、戸塚絵梨子さんは、人材派遣会社に勤めて4年目。ボランティア休職制度を利用し、NPO法人エティックの震災復興リーダー支援プロジェクトを通じて半年間活動に参加しています。

「現地に来なければわからないことがたくさんあります。社会経験のある方に被災地の課題をいっしょに考えていただきたいです」(戸塚さん)

スタッフは、仮設住宅を事務所とボランティアの宿泊施設として利用。人材を確保し、長期的な活動拠点を持つことが課題です。その一方で、「同年代の若者が街づくりに参加してくれるようになったことを歓迎している」と伊藤さんは話します。

「一人では何もできない。街づくりに目覚めた仲間の輪が広がっています。過疎と少子高齢化の問題を抱えていた以前の姿に戻すだけではダメ。新しい街づくりを仲間とともに考えていきたい。子どもたちがずっと住みたいと思う魅力ある街にしていきたい」と伊藤さんが今後の抱負を話す一方で、齋藤さんは「法人化した三陸ひとつなぎ自然学校が中心となって、単なるボランティアだけではなく、外から訪れる人たちと協力し、地域の魅力を高める事業や移住定住につながる取り組みなど、釜石の人たちといっしょに知恵を出しながら新しい街づくりをしていきたい」と語ります。

希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。人と人、地域と地域をつなぐ、新たな街づくりのため、ねおすと三陸ひとつなぎ自然学校の活動は続きます。

■『ねおす』関連サイトはこちら

左から齋藤学事務局長、三陸ひとつなぎ自然学校の伊藤聡代表、戸塚絵梨子さん

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