復興支援助成金

商店街を通じて南三陸町の再建を目指す
南三陸志津川福興名店街運営組合 復興支援助成先紹介 File 3

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「南三陸志津川福興名店街運営組合」の活動を紹介します。

被災地にこそ、にぎわいの場を

南三陸志津川福興名店街運営組合は、『南三陸さんさん商店街』の運営母体。商店街が始まった経緯を高橋修副組合長は次のように話します。

「今、さんさん商店街がある場所でもともと店をしていたんですが、津波が押し寄せ、2階に避難したものの、そのままドーンと流されました。波を見た瞬間、これはもう死ぬんだと思いましたが、神がかり的に助かった。どうせ残った命なら、もう何でもやってみようと。できることを考えた時、みなでいっしょに商店街をやるのが、町の再生につながると思ったのです。三陸自動車道のインターから15分、南三陸町の玄関口なので、立地は悪くない。民有地の部分に私以外に3軒の地権者がいて、2人が同級生だったので声をかけると、二つ返事で『いい話じゃないか』。募集をかけたら、予想を大幅に上回る店舗が手を上げました。うれしい驚きでしたね」(高橋さん)

現在、さんさん商店街には“福興”を担う地元事業者30店が軒を連ねますが、100件以上の応募があったと言います。商店街のグランドデザインにあたっては、「ありがたいことに、東京のNPOなどが、なかばボランティア的に協力してくれました」と、組合で会計を担当する熊谷和平さんは次のように語ります。

「NPOの団体が、屋台形式の商店街づくりをしたらいいんじゃないですかと提案してくれたり、いろいろなデザイナーの方々の意見を取り入れ、最終的にモールのようなかたちにして、中央にお客様が集まれるフードコートを設けました」(熊谷さん)

フードコートでは、ジャズコンサートや屋台村イベント、お祭りなどを開催。震災で沈みがちだった町に、にぎわいをもたらしています。今秋にもコンサートや利き酒大会の企画を検討中です。

商店街の役割は、ただ物を売るだけではない

南三陸は、世界でも有数の海の幸に恵まれた土地。町民は海と共に生きてきました。そんな町の名物の一つが、『南三陸キラキラ丼』。鮮やかなオレンジ色のウニが一面にのったどんぶりが人気を博し、震災前には年間4万6,000食を売り上げたと言います。震災後は、“復活!南三陸キラキラ丼”と銘打ち、季節ごとに地元産のイクラ、ウニ、鮮魚など具材を変えて年間4シリーズを展開。南三陸町の飲食店やホテルで2000円前後で提供し、各店が味を競っています。

「南三陸町は、仙台から2時間。ちょうどいいドライブコースで、お昼を食べ、帰りは道の駅で魚や野菜を買ったり、日帰り温泉に行ったり、震災前はにぎわいを見せていました。その復活の起爆剤に、南三陸キラキラ丼のキャンペーンをさんさん商店街のオープンに合わせて2月からスタート。震災の影響で他のメニューが減ったこともあり、夏までで3万食を売り上げ、震災前をはるかに超える勢いをみせています」(高橋さん)


南三陸さんさん商店街には、ボランティア活動後に訪れる人も多い

そんな“キラキラ丼”効果もあり、南三陸への観光客の足は、少しずつ戻ってきました。南三陸さんさん商店街の売り上げでも、観光客の割合がかなりを占めていると言います。「町内からの来訪者が予想より少ない」と、組合でもう一人会計を担当する阿部忠彦さんは次のように話します。

「商圏となり得る1km圏内に、仮設住宅が4~5か所あるのですが、当然のことながら高台にある。高齢者が多いので、坂を上り下りするのは大変なようです。ただしわれわれ商店街の役割は、ただ物を売ることだけではない。町のコミュニケーションの場としても活用してもらえないか、模索しているところです」(阿部さん)

さんさん商店街のみで活用できる商品券の提供や、フードコートに掲示板を掲げ、イベント案内やセールをお知らせしたり、高齢者の呼び込みに向け、子どもたちの絵や工作品を飾る展示コーナーや、遊べるスペースもつくっていきたい一方で、将来的には、仮設住宅の集会所や公民館で出張商店街のようなものを開いて、さんさん商店街との相乗効果もねらっていきたいと構想は広がります。

「南三陸に何度も何度もボランティアに来て、町のファンになってくれた若者も増えています。そんなふうに応援してくれている人がいっぱいいるのに、地元の人間がいつまでも自分たちの不幸を津波のせいにして、何もしないでいるわけにはいきません。そんなの悔しいじゃないですか。とにかくできることから始めるしかない。まずはさんさん商店街を、あそこに行くと何かおもしろいことをやっている、何かあるっていう、発信の場にしていきたいですね」と高橋さん。商店街を通じて、町を再建したいという思いは、熊谷さんも阿部さんもいっしょです。

希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。南三陸志津川福興名店街運営組合の活動は続きます。

南三陸さんさん商店街のフードコートの前で。
左から阿部忠彦さん、高橋修さん、熊谷和平さん

■『南三陸さんさん商店街』のwebサイトはこちら

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