復興支援助成金

被災地の医療を守る
NPO法人 ピープルズ・ホープ・ジャパン 復興支援助成先紹介 File 5

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ピープルズ・ホープ・ジャパン」の活動を紹介します。

個人医療機関の再建が急務

1958年、軍艦を医療船に改造し、世界の被災地に医療支援を実施する団体『Project HOPE』が米国ボストンに誕生。ピープルズ・ホープ・ジャパンは1997年、米国Project HOPE傘下の日本組織として発足し、2006年には独自の活動も行うため、連携関係を保ちつつ独立して、東南アジアでの医療支援などを中心に活動してきました。

昨年の震災をきっかけに、国内での本格的な支援活動を開始。震災当初は、避難所への医師団派遣をはじめ、HP寄贈のパソコン320台、プリンタ100台やH&M寄贈の衣類6万着などの物品類を提供していましたが、中長期的視野に立った支援の必要性を痛感します。そこで全日本病院協会に相談。被害の特に大きかった気仙沼市医師会を紹介され、気仙沼で支援活動することになりました。ピープルズ・ホープ・ジャパンの木村敏雄代表は、気仙沼の医療の現状と課題を次のように語ります。


ピープルズ・ホープ・ジャパン木村敏雄代表

「震災で、気仙沼の多くの医療機関が被害に遭いました。公的な病院は国や県の支援が受けられる一方で、気仙沼でニーズが高く、また浸透している“地域に密着した診療”を担う民間の個人病院は、十分な支援を受けられないのが実情です。特に高齢者は診療環境が変わることに強い抵抗感がある。被災した個人医療機関の再建が急務となっています」(木村さん)

単に物を提供して終わりではない

ピープルズ・ホープ・ジャパンでは、気仙沼市医師会の2度にわたる調査に基づき、個別の医療機関ごとのニーズに合わせ、医療機器・什器などを提供してきました。気仙沼市医師会の藤田正廣事務長は、ピープルズ・ホープ・ジャパンの活動を次のように評価しています。


気仙沼市医師会の藤田正廣事務長

「ピープルズ・ホープ・ジャパンは、単に物を提供して終わりではなく、毎月のように被災地に足を運び、支援した機器類の使用状況や不具合などを確認しています。責任のある支援の在り方には大変感謝しています」(藤田さん)

支援を受けている病院の一つが、村岡外科クリニック。津波ですべてが流されましたが、震災前から在宅と院内のいずれの診療も手掛けてきた医師の村岡正朗さんは、震災以降、避難先の病院から在宅診療を続けました。病院再開へ向け、ピープルズ・ホープ・ジャパンは、在宅診療のための車両と検眼鏡、超音波診断装置を寄贈。ほかに各方面からの支援をうけた村岡外科クリニックは、今年5月にようやく開業に至りました。

「午前を院内診療、午後を在宅診療にあてています。震災後は、仮設住宅も回るようになりました。一番の心配は、病状は震災前と大きな違いは見られなくても、家に引きこもりがちな人が増えていること。地域の世話好きの方々を巻き込んで、自然なかたちで外に出られるような環境をつくっていってあげられるといいなと思っています」(村岡さん)

村岡さんは、お話をお聞きしたこの日も、ピープルズ・ホープ・ジャパンから支援された診療車に乗り込み、慌ただしく在宅診療に向かいました。


村岡外科クリニックの村岡正朗さん

最後に、ピープルズ・ホープ・ジャパンの木村さんに、今後の抱負についてお聞きしました。

「気仙沼医師会の協力のおかげで、思った通りの支援ができ、現地に喜んでいただくことができました。支援を継続していくことで、現地の医療機関の皆さんなどにもわれわれの活動をさらに理解していただけることでしょう。以前からさまざまな方から、国内支援の要請をいただいていたのですが、今回の被災地支援で、今後は国内での支援も活動の柱の一つになると確信しました」(木村さん)

希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。ピープルズ・ホープ・ジャパンの活動は続きます。

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