復興支援助成金

サッカーなどを通じて、
女川の子どもたちを支援
女川町自治こども会

Focus30

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「女川町自治こども会」の藤田利彦代表に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

女川と石巻は、意識の上では一体、兄弟都市のようなものです。私も子どもの頃から、女川のお祭りなどによく来ていました。女川の震災の被害は甚大で、町は90%が浸水、人口の約10%を失いました。女川町は、住民の保護を石巻に求める状況でした。
震災当時、私は離島での医者を目指して受験勉強中でしたが、自宅が被災し、母と叔母を亡くしました。泥まみれになった受験参考書を見て、気持ちが切り替わりました。周りが騒然とする中で、自分のやるべきことが見えました。被災者のために何かをしようと、避難所となっていた渡波小学校でアメリカ軍といっしょに水の配布から活動を始めました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

子どもたちのためのグランド『ふれあいひろば』を作りました。直接のきっかけは、新田仮設住宅の周りで遊ぶ子どもたちから、「おじさん、サッカー場をつくって」とせがまれたことです。新田・清水近辺は自然環境に恵まれ、仮設住宅の回りには、遠くから子どもたちが遊びにきています。仮設住宅の敷地内では、車にボールをぶつけると叱られるので、なかなか運動ができません。学校のグランドも仮設住宅が建ち、子どもたちが走り回れるスペースが少なくなっています。
女川町役場の職員の方が、新田・清水仮設団地に隣接した梅林を保有していて、当面利用する予定がないからと、無償で提供してくれました。『ふれあいひろば』の整備には、1,000名以上のボランティアが参加してくれました。8月上旬に完成し、11月からサッカー教室を開いています。グランド整備のためのトンボやバスケットゴールも、仮設住宅の方の手づくりです。
女川町議会議員も参加しました。近所のお母さん方は、豚汁や混ぜご飯、お握りなど得意料理を持ち寄ってくれました。サッカー教室には、東京のボランティアがボールを寄付してくれました。参加した子どもたちは約20名。地元のサッカーチーム「コバルトーレ女川」が指導しました。

仮設・追波川【多目的】団地では、中学生2名の学習支援を行っています。石巻で被災した石巻市民でもある塾の先生が、安価で指導を引き受けてくれましたが、体調を崩し、学習支援は、一旦、頓挫してしまいました。そこで、インターネットを使い+skype(インターネット通話サービス)を経由して、関東の学習塾の先生方が「遠方から」インターネット越しに、学習支援を行うことになりました。英語に関しては宮城県塩竈市の英語教室の先生が、英語学習支援を担当することとなりました。

ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉など、印象に残っていることは?

私たちの活動は寄付や助成金頼み。東日本大震災への関心が風化し、活動資金が続かなくなることが心配です。
人材も不足しています。スタッフは20名程度いますが、ほとんどが県外の方です。人が足りない分は、地域の方々が協力してくれています。
南境の仮設団地に女性の踊りクラブがあります。全員被災し半被がなく、ジーンズとTシャツで踊っていました。そこで私たちが石巻の呉服店であつらえたお揃いの半被をプレゼントしたところ、とても喜んでもらえました。サン・ファン館のオープニングイベントで踊りを披露したところ好評で、イスラエルのTV局から『Beautiful Dress』とほめてもらえました。来年3月11日に山形県村山市で予定されているシンポジウムにも参加することが計画されており、立ち直った様子を披露したいと張り切っています。その他にもチャンスがあれば、自分たちができる踊りで被災者を励ましたいと言っています。
サッカー教室では、あるお母さんから、「日曜日なので本当は寝ていたかったけれど、子どもがサッカーをしたいと言うので連れてきた。眠くても子どもが喜ぶことをしたいのが母親だから。次回も機会があれば誘って欲しい」と感謝されました。うれしかったですね。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

女川や石巻にもサッカーの上手な子どもたちもいます。いつか、石巻・女川からサッカーの日本代表を出したいと思います。それは最高の復興だと思います。サッカーはお金がなくてもできるスポーツです。グランドは整備されたので、あとは環境とコーチングです。
今後も子どもたちへの支援を続けていきます。子どもたちは、国の宝。子どもたちへの支援は未来を買うこと、未来への先行投資で有効なお金の使い方だと考えています。大切にされた子どもたちは、大切にされたことを覚えていて、また次の世代につないでいく。“恩送り”が続いていくはずです。

『女川町自治こども会(石巻市復興を考える市民の会)』webサイトはこちら

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