復興支援助成金

単なる復旧ではなく新しいことを
つむぎや

Focus28

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「つむぎや」の友廣裕一代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

これまでの活動を教えてください。

活動を開始したのは、2011年の3月からです。日本財団の支援で立ち上がったつなプロのエリアマネージャーとして現地入りし、牡鹿半島で個人的に活動をすることになりました。その後、牡鹿漁業協同組合 渡辺玲参事と出会い、支援について話し合いを始めました。
牡鹿漁業協同組合は宮城県漁業協同組合に属しておらず、そのため震災前から小回りのきいた独自の路線で新しい漁業に向けて取り組んでいました。震災直後は、漁業そのものが壊滅的な被害を受けていました。男性は瓦礫処理などに追われていましたので、加工場が被災して手が空いてしまった女性をターゲットに支援することにしました。2011年5月初頭ごろからは漁網の補修糸を使ったミサンガづくりからスタートし、昨年7月からは海岸近くに『ぼっぽら食堂』を建設し、海産物を使った弁当つくりを始めています。女性たちの「遠くから支援に来ている工事関係者やボランティアに、地元のもので、温かいものを召し上がってもらいたい」という思いを実現させたのです。現在7名が働いています。一日100食前後をつくり、工事関係者や漁協、役場の方々が毎日購入してくれます。配達も行いますし、仕出しの注文にも応じるようになりました。メニューも豊富で、だんだん洗練されてきていると評判です。一般社団法人マーマメイドを設立し、独立採算で運営できるまでになりました。
壊滅的な被害を受けたワカメ養殖の支援も行っています。現在はワカメの種を外から買っていますが、地元での種の栽培を漁協が試験生産するのをサポートしています。地元栽培した種を使用できるようになれば、採算も良くなります。初めは室戸岬から海藻の専門家に来てもらい、技術指導をお願いしました。室戸にワカメの種株を送り、交配培養してもらいました。地元の水産技術総合センターでも、養殖栽培を研究していることがわかり、水槽で株培養する技術を試みることにしました。再開した鮎川浜漁港の仮設市場の中を借り、今年7月に培養実験をスタートさせました。ワカメを育てるには、時期的に遅れてしまいましたが、この種をロープに植え付け、養殖を行いました。当面はリスク分散の意味から、流通しているものと自前で栽培した種を併用していきますが、将来的には地元産のワカメ栽培で他の場所との差別化を図っていきたいと考えています。
また、ワカメの茎の部分を有効利用し、加工食品をつくる検討をしています。企画の段階から、流通・小売業者にも入って頂いて進めていこうと思っています。やみくもに商品をつくるのではなく、売れる商品を製造し、販路を確保しながら進めていく計画です。現在は残念ながら区画整理事業が進んでおらず、なかなか建物をつくる目処がたちませんが、動き出したら製造から販売までいっせいにスタートできるよう今から準備しています。

ご苦労されている点は。

復興計画の進捗と並行して進めていかざるをえない。地元のためにも復興計画が順調に進むことを期待しています。この準備期間に資金的な目途をつけていく必要もあります。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

牡鹿漁業協同組合の渡辺さんとは、現在も月に2、3回打合せをしています。震災にあったからこそ、単なる復旧ではなく新しいことをしていきたい、できることをしていきたいという熱意を感じます。震災前とは違い、例えば流通の仕組みを変えてみようという意識が生まれているような気がします。
お母さん方も、これまでは家業を手伝うということでは給与にはなりませんでしたが、外で働くことで多少でも収入を得て、自由になるお金を得られるのは張合いになるのではないでしょうか。漁協は銀行・保険・流通等々、総合商社と同じように何でもできる組織です。その強みを活かし、新しい試みをしていきたいという地元の想いをサポートする存在でいたいと思います。最終的には地元ですべて回る仕組みができ、地元の方々がやりがいを感じる方に向かっていくことが大切だと考えています。

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