復興支援助成金

被災地に稼ぎと誇りを持てる仕事を
復興応援団

Focus18

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「復興応援団」の佐野哲史代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

私の本業は地域活性コンサルタントで、2008年から3年間、2007年に発生した中越沖地震の復興支援として、新潟県十日町市で『百年の館』という貸し古民家事業を地元の担い手の方々といっしょに立ち上げました。また、商店街の空き店舗リノベーションとして『山ノ家カフェ&ドミトリー』プロデュースにも取り組んでいました。『百年の館』は2011年2月17日にオープンし、あとは行政に報告書を提出するだけの段階になっていましたが、そのほぼ1ヵ月後に東日本大震災が起きました。
少しでも復興活動の経験がある人間がフロントに入るほうが良いだろうと現地入りを考えていたところ、ご縁が重なって、日本財団と東北・首都圏・関西のNPOの合同プロジェクト『つなプロ』の現地本部長として3月17日に仙台に入りました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

つなプロでは、宮城県沿岸部の調査を行い、お年寄りやご病気の方など特定のニーズを持った方とそれを解決できる専門的支援とをマッチングする仕事にあたりました。その仕事を通じて宮城県沿岸部の全域とつながりができた中で、特に濃いご縁があって気仙沼と南三陸で復興支援活動を始め、住居も十日町市から南三陸町に移しました。最初にボランティアを受け入れたのは2011年5月28日。『復興応援団』として組織を法人化したのは8月8日でした。
復興応援団は、地元の方が中心となった復興を応援する団体です。その土地のファンを増やすためにボランティアを受け入れつつ、地元の起業家のビジネスコンサルティングをしています。
ボランティア受け入れは、2013年10月上旬までに60回、延べ935名が参加しました。ボランティアには地元の民宿に泊まってもらい、受入先である地元の起業家との共同作業と交流もしてもらうプログラムです。高校生や大学生の体験学習も受け入れています。
受入先の一つは、菊やトマトの直販に取り組む農家さん。この方は、津波の直後、自分の娘と同じ年頃の女の子を抱いたまま亡くなっていた近所のおばあさんの遺体を目にしました。そのときから、自分は生き残ったのだから、町のためにできることをやろうと一念発起されたそうです。奥さまからは「病院も保育園もなくなってしまった。これを機会に仙台か東京に出よう」と持ちかけられましたが、「きちんと収入を上げるので1年辛抱して欲しい」と、地元に残ることを説得しました。現在は法人化し、9名の正社員と、パート社員30名近くを雇用しています。耕地を広げ、難しい交渉もこなし、苦労もありますが、「亡くなられた方々のことを思えば、こんなのは何でもない」と乗り越えていっています。事業を順調に成長させている農業の起業家です。
もう一つの受入先は、ホタテやワカメを養殖する漁師さん。「漁師が作業員をしたり、ダンプに乗ったり、警備員をしている。漁師が海で稼がないのはおかしい。何とかしたい、知恵を貸して欲しい」と相談されました。いっしょに知恵を絞って、初心者向けの釣り体験プログラム『手ぶらでフィッシング』を開発して売り出しました。とても好評で、夏はお盆休みが取れないほど盛況でした。今後はホタテの新しい販売方法を考えていきます。 いずれの方も、もし震災がなければ普通の若者だったのではないかと思います。しかし震災を機に、自ら立ち上がり、チャレンジし、地域をひっぱっていく存在になっています。 そんな素晴らしい人たちといっしょに仕事をできるのは大きな喜びです。

ご苦労されたのはどんな点ですか。

一番の苦労は、人材不足。現地側のスタッフとして、社会人経験のある20代後半から30代の方に来て欲しいです。地元の方に愛されるコミュニケーションを取れる方を募集しています。組織を運営するだけの収益はありますが、現在は依頼されることに対応するだけで手一杯で、未来への投資ができていないことが気がかりです。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

復興にはさまざまな切り口、いろいろなアプローチがあると思いますが、復興応援団は、地域での雇用づくりに焦点をあてていきたいと思っています。
地元起業家と共に知恵を絞ってその事業を成長させ、稼ぎと誇りを持てる仕事を地元にさらに一つでも二つでも生み出したいと考えています。そういう仕事が生まれれば、人材は地元に残るようになるし、あるいは戻ってきたり、新たに流入してきて、活力ある地域になります。復興応援団としては、観光業の立ち上げに力を入れていくつもりです。買物ツアーや視察・研修などトライアルで好評だったものをプログラム化します。目指すのは、地元起業家の人間的魅力を中心として地域のさまざまな魅力をまとめて体感できる地域包括型観光です。

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