復興支援助成金

夢は女川の特産品づくり
コミュニティスペースうみねこ

Focus03

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「コミュニティスペースうみねこ」の八木純子代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

震災後1カ月は自分自身、食料を確保したり、家族を探したり、とにかく生きることだけで必死でした。家族の無事が確認できてからはホッとして、4月1日にボランティア活動を開始しました。避難所で乳児の夜泣きに困っているお母さん方がいて、私は保育士の資格を持っていたものですから、まず乳児中心に子どもを預かることから始めました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

いろいろボランティアをしましたが、他の方の現業を圧迫しないような活動を選んで実施しています。
子どものお預かりについては、震災2カ月後ぐらいから保育所や学校が再開し始め、役割がひと段落しましたので、高齢者の支援を始めました。その時、驚いたことに90歳以上のおばあさんから、「震災後一度もお風呂に入っていない」と言われたのです。避難所のお風呂は手すりがぐらぐらし、湯船をまたがなくちゃならないから入れない、ということでした。そこであるNPOの借家をお借りし、高齢者に食事とお風呂を提供しました。わが家のように安心でき、話し相手もできると喜ばれました。
当初は仮設住宅に物資を届けていましたが、働いてお金を得ることが基本と考え、ママ友6名で手仕事を検討し始めました。その結果、支援で頂いたTシャツを有効利用して布草履を作ることにしました。仮設住宅のお母さんたち約10名に集まってもらい、製作を開始。60代後半から80代までの高齢者で、皆さん草履作りは初めてでしたが、自信を持ってもらうため全て買い取りました。初めて商品として出したのは、震災の年の秋、神奈川の逗子で行われた市民まつりの時。全て完売し、買ってくださった方全員の写真を撮り、お母さんたちに見せると、大喜びでさらに前向きな気持ちになってくれました。
生産を増やすと不良品も増える、ネット販売すると生産が追い付かなくなるなど、試行錯誤しながらやってきましたが、今は40人くらいが取り組んでいます。
お父さんたちにも元気になってもらいたいと、今年4月から野菜作りを始めました。草取りから始め、唐辛子とイチジクを植えてもらいました。漁師や、水産加工に勤めていた方々で、畑仕事は初めてだったのですが、唐辛子の苗を碁盤の目のようにきっちりと植え、翌日からは水やりも自主的にしてくれるようになりました。今は4名が作業し、枝豆やカボチャ、トウモロコシなども育てています。「居場所ができた」とか、「夫婦の会話も増えた」と喜ばれています。スペースを増やし、参加者も増やしていきたいと思っています。
その他、サンマの形のたい焼きも作っています。神奈川のボランティアに相談し、金型から作って、焼き方も教えてもらいました。この商品は、若い方の雇用につなげていきたいと考えています。

ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉など、特に印象に残っていることは?

残念だったのは、仮設住宅の集会所が急に使えなくなったこと。昨年5月にコンテナスペースが完成し、そこで製作できるようになりましたが、盛土が予定されているのでいずれ移転しなければなりません。津波で残った実家の建屋を改装し、休憩所兼カフェにして、観光客にも利用してもらったり、ランチも出せればと考えています。
うれしかったのは、「布草履作りがあったから良かった」とお母さんたちにしみじみ言われたこと。布草履を話題に、色の組み合わせをどうしようとか、材料の厚さに応じて幅を変えようとか会話が弾む。年齢の差を超えて助け合い、自然に結束が強くなったように思います。マスコミにも取り上げていただけるようになりました。最初は固くなっていましたが、今ではすっかり慣れて、自ら“ババドル”と呼んで楽しんでいます。表情も生き生きしてきて、大学の先生がここのお母さんたちの様子を高齢化研究のテーマにしています。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

お父さんの野菜をお母さんが加工し、それを女川の名物にするのが夢。畑で採れる唐辛子とイチジクで、女川の特産品をつくりたいと考えています。この地域では昔からイチジクを煮て冷凍庫に保存して食べる習慣があります。ボランティアに出したところ好評で、イチジクのワイン煮など特産品のヒントにしたいと思っています。
ある時、おばあさんから「仮設で死ぬんだな」と言われたことがあります。高台移転に時間がかかり、弱気になっていたのでしょう。「寿命を伸ばして上げることはできない。家もつくってあげられない。でもね、一緒に楽しむことはできる。だから楽しもうよ」って答えました。手仕事や野菜作りによって、とにかく楽しんでもらえればと思っています。

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