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復興支援助成金
助産師による、産後の母子へのケア
ジェスペール
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ジェスペール」の宗祥子代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
東日本大震災の被災地・被災者への復興支援活動を開始した理由、きっかけを教えてください。
震災直後は、三菱商事の助成を受けて「東京都助産師会」を母体に、東京に避難した妊産婦の受け入れを実施。79組の出産をサポートしました。一方で、東京まで避難できず、十分な支援を受けられない妊産婦の方々のほうが多いことも事実でした。東京都助産師会としての活動には限界があると考え、2012年に新たに立ち上げたのが「ジェスペール」で、現地への助産師の派遣や、被災地の乳幼児や母親のために活動するNPOや助産師有志による団体への支援を始めました。
これまでどんな活動をされてきたのですか。
宮城県石巻市のNPO法人 ベビースマイル石巻のサロン活動のサポートや、岩手県大船渡市における助産師によるNPOこそだてシップの立ち上げ支援などを実施してきました。サロン活動の運営や活動資金の調達をお手伝いしたり、経験豊富な助産師を派遣したりしているほか、広報の側面からもサポートするなどしています。
石巻では、ベビースマイル石巻が乳幼児支援の中心になり、毎月延べ200組以上の母子が参加しています。助産師による相談や体操などの定期的サロン活動に加え、母親向けワークショップを開催、母親自身が楽しみ、母親同士で支え合う機会を設けています。ベビースマイル石巻は、内閣府の平成25年度子ども若者育成・子育て支援功労者表彰で、内閣総理大臣表彰を受賞しました。
大船渡では、気仙管区の人口約65,000人に対して出産できる病院が一つしかなく、出産や子育て支援の必要性は震災前から課題になっていました。そこで震災後、巡回訪問と月1回のママサロンを始めました。ママサロンには毎月30~40組の親子が参加。妊婦から0歳児と、保育所や幼稚園への通園前の幼児の2グループに分けて、プログラムを用意しています。妊婦から0歳児のグループには、助産師による検診と育児相談を実施。幼児のグループに対しては、演劇や人形劇などのイベント、リズム体操などを行っています。あくまでも子育てしているお母さんたちに楽しんでもらうことを目的にしています。行政も協力的で保健師を派遣してくれたり、施設も無料で使用させてくれたりして助かっています。
ご苦労されたのはどんな点ですか。
震災後、被災地の助産師は活動を成り立たせることが難しく、ボランティアに近いかたちで仕事をしている方も少なくありませんでした。そこで私たちは、サロン活動などへの活動支援というかたちで助産師に活動資金を提供しています。しかし私たち自身資金の調達には、苦慮しています。行政の中でも、高齢者への福祉事業などに比べ、産後の母子へのケア事業は陽があたりにくく、優先順位も高くありません。私たちが支援する石巻市や大船渡市のNPOは、県や市の福祉担当者と頻繁にコミュニケーションをとっていますが、委託事業となるまでにはまだハードルがありそうで、活動の継続性をいかに確保するかが課題になっています。資金調達は海外からも視野に入れ、運営しているWebサイトでは英語でも情報発信しています。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
震災後の活動を通じて、産後ケアの重要性のみならず、1歳から3歳ぐらいまでの幼児と母親のケアも大切なことを改めて実感しました。また、これまであまり交流のなかった助産師同士の地域の枠組みを超えた横のつながりが醸成され、困難な中で活動を継続してきた同志としての連帯感も生まれています。これからは、震災後に始まった各地の母子支援を確実に地元に定着させ、すべての母親が子どもを産んでよかったと心から思えるよう、また健全な母子関係により子どもたちが健やかに成長できるよう、現地支援者と共に見守っていきたいと思っています。
そして「母親が安心して子育てできる社会」を創っていくことを目標に掲げ、被災地域に限定せず、妊産婦支援を継続していきたいと思います。