復興支援助成金

“障がい児の駆け込み寺”として
ふよう土2100

Focus45

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ふよう土2100」の大澤康泰副理事長に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興支援活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

被災者はいまだに仮設住宅での生活を強いられています。住み慣れた土地を離れ、避難生活を過ごす子どもたちは、一般の小中学校に通っていても不安を感じる日々を過ごしています。特に障がい児は環境の変化になおさらとまどい、不安を増長。そんな子どもたちの姿に、障がい児を育てる親たちも多くのストレスを抱えています。
障がい児を抱える福島県双葉郡8町村からの避難者は、子どもたちを郡山市内の養護学校に通わせています。しかし、もともと郡山市内は、養護学校に通う子どもたちが県内他市町村と比べて多い場所です。放課後に一時預りを利用するとなると、空いている施設を探して利用せざるを得ない環境でした。夏休みや冬休みの長期の休みに入ると、朝9時から夕方6時まで障がい児を預かる施設は少なく、生活に支障が出てきている被災家族も少なくありませんでした。
そこで、子どもの障がいで悩みを持つ保護者の生活サポートや心のケアに努めるため、『交流サロンひかり』を2012年5月に開設。障がい児の一時預りだけでなく、障がい児を持つ親が本音を出し合える交流の場を提供し、被災地の障がい者家族の生活支援に努めるようになりました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

団体設立以前は、「地域の宝を見直して、地域の輝きを取り戻し、地域を愛する人材を創り上げよう」という目的で、2007年12月から2011年3月まで『いわきフラオンパク』を開催。延べ300種類の体験交流プログラムを実施してきました。①いわき市の資源や歴史文化を探し出す、②地域住民で磨く、③地域住民同士と地域外からの訪問者と体験交流する、この3つの柱を基本構想に、地元を誇りに思う人材育成を提案してきました。
東日本大震災以降は、いわき市を中心に復興事業に精力を注ぎ、当初は市内の避難所で炊き出しなどのボランティア活動を行い、母と子ども向けの体験交流プログラム『キッズオンパク』を実施。また、農産加工業の方々と連携し、全国で物産展のコーディネートや講演を積み重ねてきたほか、被災地の現在の姿を伝えるスタディツアーを実施して、県外からの視察訪問団約2,000人をこれまでに案内してきました。
『交流サロンひかり』は現在、定期的に利用する子どもが5人、不定期に利用する子どもが10人。この1年間で、富岡町・双葉町・葛尾村からの避難者の定期利用も見受けられ、延べ800人の障がい児が利用しました。被災地の障がい者家族の生活支援の場、居心地のいい居場所としての運営に努めています。

ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉など、印象に残っていることは?

送迎車両が1台しかないため、放課後の送迎時間が重なったときのやりくりは大変です。
夏休みから『交流サロンひかり』の利用を始めた一人に、アスペルガー症候群で学校以外では母親と離れることができなかった子どもがいました。しかし『交流サロンひかり』では、一人でほかの子どもたちと仲良く遊ぶことができました。お母さんから、「こんなにゆっくりできたのは、久しぶりでした」とのお礼の言葉を頂き、事業を実施してきた成果があったと感じました。
避難者が一時帰宅のため、新規に利用したり、兄弟で利用するケースもあります。8月の夏祭り、12月のクリスマス会では、ボランティアを含めそれぞれ約20人が参加。子どもたちの楽しそうな笑顔がとても印象的でした。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

利用する子どもだけでなく、お母さんたちが迎えに来た後も『交流サロンひかり』に立ち止まり、スタッフやお母さん同士がなごやかに話すケースが多く見られます。障がい児家族のストレス軽減にわずかながらでもお手伝いできたかなと実感しています。しかし、まだまだ郡山市内の障がい児受け入れ施設は限られ、利用日数・時間も制限され、普段利用している施設でも急に利用をお願いした場合には、なかなか利用できないのが現状です。
これからも“障がい児の駆け込み寺”のような存在として、子どもたちが学校と家庭以外に安心して落ち着いて過ごせる場所を提供し続けたいと思います。そして、被災した障がい児家族が子どものことで悩み苦しんでいるのは自分たちだけではないこと、共に生きることによって親が「子どもたちにありがとう」を、そして子どもたちが将来、「生んで育ててくれてありがとう」と親に言えるような、安心して暮らせる社会づくりのために尽くしていきたいと思っています。

『特定非営利活動法人ふよう土2100』webサイトはこちら

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