復興支援助成金

精神障がいの方々にも笑顔の生活を
くるり

Focus41

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「くるり」の佐藤智江代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

震災前から障がい者施設に勤めていました。震災で特に精神障がいの方々の病状が悪化しました。小さくても決め細やかなサービスを提供したいと考え、新しい障がい者施設「くるり」を始めました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

現在、障がい者児童施設では小学校3年生から高校1年生までの子どもたちを6名預かっています。支援プログラムは子どもの状態に合わせ、親御さんと相談して決めています。震災以降、トラックの音を地鳴りと勘違いしたり、電車の音を津波と聞き違えて怯えたり、地震のあった14時46分以降になると不安を訴えるといった症状が出てしまう子がいます。
就労継続支援事業施設では8名の利用者が作業をしています。菜園では野菜づくりをして、近くの仮説住宅で販売しています。東松島市で高台移転の造成の際に伐採された木材のベニア合板を糸ノコで切り出し、鍋敷きなどの工芸品を製作しています。その他にモザイクタイルを作っています。モザイクタイルは、色使いや細工するタイルの大きさに利用者の個性が現れます。自分のペースで作れるので、障がい者の作業に向いていると思います。完成品は、仙台の障がい者施設「こぶし作業所」の玄関壁画ピーターパンに利用されました。作り方は、支援員が千葉県柏市にあるNPO法人エコ平板・防塵マスク支援協会で研修してきました。技術者が仙台に来られたとき、指導を受けています。石巻市、東松島市、松島町で計画中の再生公園で利用してもらえるよう、提案しています。涌谷町の建て替えを計画している施設にも、モザイクタイルの利用を働きかけています。
施設の支援員は7名。昼間は障がい者の作業支援をし、夕方は、子どもたちが学校から帰って来てからの支援を行っています。二つの施設を同時に運営するのはめずらしく、他の障がい者施設からも注目されています。先日宮城県東部保健福祉事務所から、どのように支援しているか具体的事例紹介の講演を頼まれました。
障がい者への支援は丁寧に行うことが大切で、活動終了時に毎日ミーティングしています。
子どもたちがうるさく感じている大人の利用者もいるかもしれません。しかしその反面、子どもたちの賑やかさが大人の利用者の癒しにもなっているように思います。大きな施設では集団での活動が多く、個人のニーズに対応できない状況もあって、利用者が窮屈に感じることもあります。ここでは、少人数ですから、お一人、お一人の個性がわかります。その個性に合わせて支援を展開することで、利用者同士がもめることもなく、利用者も支援員も表情が柔らかく笑顔が絶えません。

ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉など、印象に残っていることは?

母親が住んでいた家が地震で倒壊し、その跡地に施設を建てました。立ち上げのときには市街化調整区域だったので、建築許可を頂くまでに手続面で大変苦労しました。
子どもを抱えて働くことは大変です。くるりができたおかげで、子どもを預けることができ、仕事に行けると親御さんから喜ばれています。預かる時間も柔軟に対応しているので、迎えの時間を気にせず働ける点でも喜ばれています。
近隣の方々も協力的です。仮設住宅と交流があり、自治会長さんがいろいろな相談にのってくれます。地域に助けられていることを実感しています。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

開設して、まだ4ヵ月。まずは法人としてきちんとした活動をしていき、運営を軌道に乗せたいと思います。まだ、定員に満たないので、利用者を増やすことも課題です。私たちの活動も、小さくても復興の大切なパーツの一つ。笑顔の絶えない、悩みを話しやすい、温かい施設にしていきたいと思っています。一生に一度の人生ですから、精神障がいの方々にも笑って過ごして欲しいと考えています。

このページのトップへ