復興支援助成金

東北の若者のために未来を創る
ミラツク

Focus40

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ミラツク」の西村勇也代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

震災当日、東京の六本木でワークショップを行っていました。会場だった高層ビルが大きく揺れ、ワークショップは中止。テレビで被害状況が映し出され、想像以上の有りさまに何かしなければと感じました。
ツイッターで次々と発信される情報を、まずは整理して提供するサイトをつくることにしました。当時はまださほど普及していなかったFacebookを使い、ツイッターの情報を切り貼りし、項目を立てて整理する作業を始めました。Facebookを立ち上げるとすぐに5,000人が登録し、情報提供や作業を手伝ってくれました。2日目には8,000人に増えました。その後、政府が復興支援サイト『助けあいジャパン』を立ち上げたので、そちらに誘導し、活動を終えました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

震災前にミラツクは、新しい未来を創ろうとする起業家や学生、NPO活動をしている人々などを対象に、対話によるワークショップを実施していましたので、このノウハウを使って被災地の支援をしたいと考えていました。岩手や宮城に入っている友人が多かったので、私は4月に福島県郡山市の避難所に入りヒアリングを行いました。物資はありましたが、心理的な面でサポートが必要だと感じました。キープ協会と連携して福島の若手のリーダーを山梨に招待し、研修を実施することにしました。キープ協会が復興支援のためにつくった実験農場を使い、3日間のキャンププログラムで、第1回目は5月にスタートしました。2回目からは東北被災3県を中心に、全国から参加者を募りました。被災地で活動するNPOも参加者募集に協力してくれました。中には被災地のボランティア活動に参加しいったん東京に戻ったものの、この先の支援方法に悩む学生らも参加してきました。50名規模でトータル10回開催しました。

キャンプでは大きく分けて、被災地の現場で話したい、または被災地から外に出て話したいという2グループがありました。山梨での3回目のキャンプに参加した陸前高田で活動する方から、陸前高田で研修を実施して欲しいという要望がありました。現地のニーズを調査したところ、地元の『陸前高田創生ふるさと会議』では、陸前高田で若者がどこにいて何をしたいのかを掘り起こしたいと考えていました。共同で課題を話し合う場をつくろうということになり、住民参加型の対話『陸前高田の未来をつくる対話プロジェクト』を開始することにしました。2011年12月から2012年7月までに全7回開催し、137名が参加しました。

2013年1月から20~30代の読者が集まるWEBマガジン「greenz.jp」(読者数15万人)と協力し、若手の復興関係者を紹介する「greenz東北」の取り組みを立ち上げました。また、一般社団法人Issue+designと共同で、情報発信と人を動かすことを目的に復興に関わる三陸沿岸の人を紹介するコミュニティトラベルガイドブック『三陸人』を発行予定です。『三陸人』で紹介するのは、地元で事業を実施し、外からの人を受け入れられ、アピールしたいと考えている人です。10地域10名ずつ100名を想定していましたが、それだけでは納まらず300人程度に取材しました。編集スタッフは10名で日本語は2014年2月の予定です。

被災者の言葉など、印象に残っていることは?

現地の方々と話をすると、大変な思いをされたことと、これから実現しようと思う気持ちの間には相当のギャップがあるはずですが、よく立ち上がってこられたと感心する方々が大勢います。陸前高田のうごく七夕の実行委員の方は、経験も資金もない中、実施したいという一念でした。「陸前高田の未来をつくる対話」に参加する間に大勢の方からアイディアをもらい、最終的に祭を実施しました。

仙台でのクラウドファンディングの研修へ参加した女性はダンスが得意で、アートフェスティバルを実施し、その収益を被災地に届けたいと考えていました。対話をしながらやりたいことのイメージが文字に変わり、クラウドファンディングに載せることができました。彼女も夢を実現させました。私たちは機会を提供するだけで、研修では何か教えるわけではありません。参加者同士が出すアイディアを自分なりに租借し、吸収し、実現に結びつけるのです。

予測と状況にギャップが出た時は、方針転換が必要です。震災復興の現場ではギャップの振れ幅が大きく、柔軟に対応していく必要があります。陸前高田の対話は1年継続し地元に引き継ぐ予定でしたが、半年で終了しています。陸前高田だけでは十分な数の若手リーダーを巻き込むことができず、また、地域間の連携が不足しているという新しい課題が見えてきたため、対象の地域を広げて取り組むことにしました。2012年9月からは南三陸から釜石の若手事業者たちに参加してもらい、地域間連携のための対話『ダイアログBAR気仙』を実施しています。

陸前高田での対話で、課題が3つ明らかになりました。①人手が減っている、若者が現場にいない、②やっていることが地域を越えて伝わらない、関東圏や海外にも情報を発信したいが時間がない、③活動資金が不足している、の3つです。『三陸人』や『greenz東北』、クラウドファンディング研修会もこれらの課題に対応したものです。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

3つの課題に、引き続き対応していきます。『三陸人』ができたからといって、すぐに人が動き出すわけではないでしょう。クラウドファンディングにしてもさらに広めていく必要があります。これまでの経験から、ネットワークづくりから始めないとうまくいかないことがわかりました。市役所や大学、復興庁などとも協力し、起業家や被災地の支援活動を行う若者のネットワークをつくり、研修を実施したいと思います。
“ミラツク”は、未来を創るという意味です。“対話を通じて、「協力関係」「アイディアの実践」「視野の広がり」を生み出し、ソーシャルイノベーションを加速することで手にしたい未来を一歩近くにたぐり寄せる”というのが、スローガンです。東北の未来のために活動する若者を支援していきます。

『NPO法人 ミラツク』webサイトはこちら

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