復興支援助成金

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ボランティアステーションin気仙沼」の菊田忠衛代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由やきっかけ、これまでの活動を教えてください。

震災当初は頭の中が真っ白の状況でした。避難所では、落ち込む人、何とかしなければという人、何か手伝えることがあればやりたいという人の3種類くらいの方々がいたと思います。私の場合は、被災して妻が体調を壊し避難所での暮らしが無理だったので、知人の紹介で部屋を見つけてもらい、仮設住宅に移るまで4ヵ月を過ごしました。この間には両親の葬儀などやるべきことがたくさんありました。
7月に40世帯の仮設団地への入居が決まりました。行政には自治会の必要性を訴え、私自身が発起人になること提案しました。7月末に行政の説明会があり、その席で改めて自治会立ち上げの集会日を決め、8月中旬に各世帯1名ずつ40名に集まってもらいました。まだ自分のことで精いっぱいで、下ばかり向いている方が大半でした。自治会を組織すると、入居の報告とお礼を伝えに、地域の自治会長に挨拶にいきました。自治会長も仮設住宅の住民とどう接して良いか戸惑っているところで、私たちの訪問は歓迎されました。地域の方々は好意的で協力的でした。
困っていることを聞きに、一軒一軒仮設住宅を廻りました。70軒程で、一人の限界を感じました。仮設住宅を支援する母体となる組織の必要性を感じていたところ、復興商店街の『気仙沼さかなの駅』が12月10日にオープン。その中にボランティアスペースをつくることになり、その運営を頼まれました。両立は難しいので、自治会長は譲り、12月11日に『ボランティアステーションin気仙沼』を立ち上げました。法人挌を取得したのが、翌年5月16日です。
運営は、資金がない中でスタート。阪神淡路大震災の経験者から、花は見るだけで心が和み、水をやる作業で癒され、生きがいを感じるといったお話をお聞きし、花プロジェクトを実施することにしました。全国に支援を呼びかけたところ、プランターや土、種を寄付して頂きました。2年目は、仮設住宅の方からの要望で、野菜もつくることになりました。気仙沼には90ヵ所以上の仮設受託団地があり、私たちの支援対象は65ヵ所です。その他、大島、唐桑、本吉地域にはそれぞれ支援組織があります。
時間が経過し、仮設から公営住宅への移転に関心が移っていきました。仮設住宅の代表者で構成する代表者交流会を基軸にして、行政との話し合いが持たれるようになりました。行政から説明資料「住宅再建検討の手引き」が配布されましたが、素人が理解するのは難しく、2012年12月から「住まいの勉強会」を開催することになりました。間違ったことを伝えられないので、何度も市役所に通って制度を正しく理解するよう勉強しました。先祖代々一戸建てに住んでいた人が多いので、勉強会では「敷金・礼金とは何か。駐車場は何台まで無料か」といった質問がでます。当初は防災集団移転を希望していた方の中には家まで建ててくれると勘違いしていたり、資材不足・人材不足での建設費が高騰して災害公営住宅へ転向する方もいて、入居希望者が定員をオーバーしている状況です。気仙沼では計画通りであれば2015年（H27年）7月に公営住宅への移転が完了しますが、現実には入札が不調に終わるなど、計画の遅れが見込まれます。

ご苦労された点は。被災者の言葉など、印象に残っていることは？

震災で裸同然になった私たちでしたが、全国から様々な支援を受け、避難所から仮設住宅に移るころには、運送会社を頼まなければならないほど物資が増えました。もらうのが当たり前、震災前にできていたこともやってもらうことに慣れてしまう、進化と逆の方向に向いている、こうした状況に危機感を感じました。好意で持ってきてくださる方への感謝の気持ちを忘れてはいけません。しかし少しずつ状況が戻ってくるにつれて、支援によっては民業を圧迫するようにもなってきました。私たちは2012年1月には、物資の支援は打ち切りを宣言しました。
今後、こうした災害が起きた時には、物資受け入れを一本化し不平等にならないシステムづくりが必要です。今でも仮設住宅に直接物資を持ってこられる方もいます。お気持ちはありがたいのですが、被災者の自立を促すためにも、別なかたちでご支援頂いた方が良いと思います。
10軒ほどの小さな仮設団地で、住民が結露に悩まされていました。行政には何度お願いしても対処してもらえず、困っていました。私の座右の銘は「できないことは口に出さない」、そのかわり言ったことは必ず実行する、有言実行です。素人工事でしたが修理を引き受け、大変感謝されました。仮設の自治会長が集まる代表者交流会の席で、市長や市の職員を前に、その自治会長が「ボランティアステーションに直してもらった」と感謝を述べてくれました。その後もその自治会長は協力的です。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

災害公営住宅への移転が決まり、一つのミッションは終わったと感じています。今後は、公営住宅への移転前にコミュニティをどうつくっていくかに取り組んでいきます。行政の支援は公営住宅移転までですので、コミュニティづくりは今から準備しておく必要があります。
みなし仮設の情報は、行政や社会福祉協議会にしかありません。みなし仮設を対象に1140個のミニシクラメンの鉢植えを社協の方に配って頂きました。留守宅には「ボランティアステーションin気仙沼からのプレゼントです。ご連絡ください」とメモを添え置いたところ、連絡が取れなかった住民から連絡が入り、社協からも喜ばれました。みなし仮設は一関市に住んでいる方が多く、いずれは気仙沼に戻りたいと考えている方が多いようです。
徐々に私たちの活動が行政や社協にも認知され理解されてきました。これからも協調して公営住宅の移転まで支援を続けていきたいと考えています。公営住宅への移転が完了し、新しいコミュニティが形成され私たちの役割がなくなった時が活動を終える時と考えています。
神戸の前例から学び40～50代の男性をターゲットにコミュニケーション麻雀等、孤立化を予防する催しを実施しています。また、最近は講演を依頼されます。災害はいつ起こってもおかしくありません。私たちの経験が他の地域でも活かされるよう普及していきたいと思います。

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