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復興支援助成金
農業による復旧、
そして復興、さらに地域おこし
一般社団法人ReRoots
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ReRoots」の広瀬剛史代表理事に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
これまでどんな活動をしてきたのですか?
仙台市若林区の津波被災を受けた農地への支援活動です。当初から“復旧”そして“復興”、さらに“地域おこし”という方向性は変わっていません。
これまでに延べ2万7,000人以上のボランティアが参加し、470件余りの依頼を手掛けてきました。震災直後、学生サークルからスタートし、2012年に一般社団法人になり、当初30名程度だったスタッフも約50名に増えました。仙台市内の大学から集まり、卒業生が積み上げたノウハウがうまく後輩へと引き継がれています。中には、「全国から参加しているボランティアとの交流が魅力」と、そのままスタッフになる学生もいます。4つの部と4つのチームを組織し、それぞれ役割分担して活動しています。
チームの活動テーマは大きく4つ。一つは、農業の再生。次に、コミュニティの再生。そして、景観の回復。心が癒される風景をつくっていく試みとして、ひまわりを植えています。昨年収穫した種は、福島の障がい者就労支援施設シャロームで油にしてもらいました。4つ目は、生産した農作物の販売です。昨年11月から毎週土曜日、仙台駅前の朝市に『りるまぁと』を出店し、収穫した野菜を販売しています。
農家の方々は、家も作業場の機材も種も全て流されています。これまで同様に営農することはできませんが、いっしょに活動しているうち、意欲が徐々に高まってきているように思います。
現在、どのような問題意識をお持ちですか。
国では集約化、法人化、六次産業化を進める動きがあります。若林地区も、今年の冬から2~3年かけて大規模区画整理が行われ、30アール規模から1ヘクタール規模での農業経営が求められます。昔は農家同士がお互いに助け合いながら経営をしてきましたが、戦後は機械化も進み、家族労働による農業に変わりました。農機具も共同利用からそれぞれが自前で持つようになりました。農家ごとに栽培方法や栽培作物が異なります。大規模農業経営となると、法人として生産計画を立て、個別の意見を取りまとめていくマネジメント能力が求められます。農家は農業労働者に変わり、給与を得て働くようになりますから、農村文化が大きく変わることが予想されます。果物などの収益性の高い作物は六次産業化に適していると思いますが、米、白菜、ホウレン草など、収益性の低い作物も栽培しなければ食卓は満たされません。収益だけを追いかけては、収益性の低い農作物は輸入に頼ることになり、地産地消が守れません。
昨年、若林地区の農家約50軒にヒアリングを行い、問題点と課題を調査しました。調査結果を農家にフィードバックし、行政や社会福祉協議会にも報告しました。今年は集落ごとのより細かい調査を実施しています。明らかになった課題の解決に向けていっしょに取り組んでいます。
若林地区に限らず、農家には後継者問題があります。高齢化が進み、若林地区の平均年齢は65歳を超えています。各地で後継者養成研修が行われていますが、被災地では住むことは難しいので通い農のスタイルになると思います。若林地区でも、アイデアとしては園芸センターを座学の場、廃校になった小学校を宿泊施設に利用し、宿泊研修の実施ができないかと検討しています。数年かけてFarm Stay研修パッケージをつくっていきたいと思います。
地元からも大きな期待があり、ReRoots自体がこの地区の後継者になることも検討しています。本格的に農業に取り組むようになれば、非営利農業法人をつくってみたいと考えています。
ご苦労された点は。被災者の言葉など、印象に残っていることは?
苦労や困難と感じたことはありません。理不尽な困難と立ち向かっている農家の方々を思うと、多少のトラブルがあったにせよ乗り越えられないものはないと思っています。“農業”“就業”“福祉”といった点からも助成が受けやすい活動資金も今のところ計画的に回せる状況です。
若い人が農業に取り組んでいるということでマスコミからも注目され、地球の歩き方のボランティア冊子にも紹介されました。農林水産省からは「平成24年度オーライニッポン大賞」でグランプリを頂きました。農林水産省の白書や仙台市の震災記録誌にも紹介して頂きました。
私たちは農家の支援が前提。ある農家の依頼で瓦礫処理を行ったときのことです。近隣の農家の方が自分のところの畑もお願いしたいと言ってきました。その時、最初の依頼者が、「本気で農業をする気があるのか。ただの瓦礫処理であれば彼らに失礼だろう」と、私たちの気持ちを代弁してくれました。ReRootsの活動が理解されていると感じ、嬉しくなりました。
活動を継続していて喜びを感じるのは、植えたものが収穫できるだけではなく、農家の方々と課題を解決していく過程にあります。
ボランティアの方には、身近な土地でもないのに継続して関心を持って足を運んで頂いていることに感謝しています。ボランティア同士のつながりも成果の一つ。ベテランボランティア同士で、誰かが就職が決まると祝う一方、会う機会が減ることを残念で寂しいと感じる密な人間関係ができています。ボランティアが入ることで、農村に人の往来も生まれています。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
農家の方々はとても謙虚で、懐が広く、研究熱心。自然相手なので思い通りにならないのが当たり前。「毎年1年生だから」と仰います。
ReRootsが管理する、『ReRootsファーム』などの畑が3か所あります。引きこもりがちな被災者のため、また栽培に興味を持った一般市民の市民農園も農家と協力して開設。また若林地区のファンを増やすため、農家の方が主体となって体験型の田植えプロジェクトやサツマイモプロジェクトを実施しています。農業には単に農作物を生産し販売して収益を上げる以外、食育や労働体験、福祉的役割があります。子どもの自然体験や高齢者の健康維持の場として、また、社会性に困難を抱え一般労働が難しい方々を対象にした中間就労支援の場としても利用できます。こうした農家にはできない農業の活用をNPOの役割として強化していきたいと考えています。