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復興支援助成金
ITスキルを持つ、
復興を担う人材を育成
特定非営利活動法人(認定NPO法人)
BHNテレコム支援協議会
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「BHNテレコム支援協議会」の有馬修二参与に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。
最初に、「BHN」について説明させてください。BHNはBasic Human Needsの略で、人間が人間らしく生きていくための基本的な要素である“衣・食・住”のことを指しています。私たちは必要最低限のBHNが満たされていないと生活することができません。当会では、「情報通信も重要な生活基盤を構成する基本要素」と考えています。
世界中の誰もが必要な情報にアクセスできる世界を目指し、「BHNテレコム支援協議会」では『生活向上のための支援』『緊急時の人道支援』『人を育てる支援』という3つの柱を中心に活動を行っています。
当会は、2011年3月11日の東日本大震災の激甚な災害状況を知るに及んで、従来の途上国支援から活動の重点を大震災被災者支援に切り替え実施することとしました。支援は、大震災発生翌日、宮城県名取市避難所にモバイルクリニック支援(医療関係NGOとの連携)、続いて岩手県遠野市からの支援要請があり、3月下旬釜石市等沿岸被災地4市2町の避難所等へ仮設型インターネット設置、ラジオの配布等を実施しました。
上記の他、①東北3県の臨時災害放送局、コミュニティFM放送局の新設、移設、②原発事故で計画的避難地域となった福島県飯舘村の避難村民と村役場、村民相互の情報伝達を図る情報システム提供、③宮城県石巻市等被災者IT研修・就労支援事業として被災者の生活拠点等にインターネット環境提供、就労希望者等のITスキル研修講座「ICTオープンカレッジ」を開講(地元石巻専修大学と共催)、などを実施してきました。
私自身が、「ICTオープンカレッジ」に関わるようになったきっかけは、二つあります。私は、約30年前に東北・宮城県の大河原電報電話局・局長としてお世話になっておりました。その後は、海外と直接やり取りする情報通信システム事業等が中心となり、お世話になった東北地域との関係が疎遠となったまま定年退職の時期を迎えました。当会の佐藤征紀会長から、一緒にやろうと声をかけて頂き、宮城県の復興支援活動に関わることをお願いしました。もう一つは、私自身がこれまで研究してきた 個人知、組織知、及び社会知の知識「連結・統合」構成法と情報通信分野への応用研究 を活用した「シニア世代が中核となって活躍する新しい事業の在り方」のヒントを見つけたい思いから取り組んできました。
「ICTオープンカレッジ」では、これまでどんな活動をされてきたのですか。
「ICTオープンカレッジ」では、地元の石巻専修大学及び復興大学と連携して、大震災被災地域の復興を担う人材の育成を目指しています。特に石巻エリアの主要産業である漁業、水産加工業等を生業とする家内工業、中小企業の復興に資するため、関係者のITスキル向上を図ることを目指しています。
昨年度は、第1期講座(2012年8月~11月)、第2期講座(基礎・応用コース2013年2月~3月)を延べ6ヶ月間「ICT集合研修」として開講し、100名を超える受講者がありました。
2013年度は、石巻専修大学及び復興大学が中心となり「漁協向けIT出前研修」から開始しました。当会は7月から加わり、石巻専修大学及び復興大学と連携して活動を開始しました。9月末までに、宮城県漁業協同組合の石巻市の佐須浜地域(14回実施)、東浜地域(12回実施)、大原浜地域(11回実施)等三つの地域の漁業関係者等を対象に実施しました。多くの場合、各回の受講者数は2名~5名の小規模IT出前研修となりましたが、受講者の意欲が高く研修効果は大きかったと考えます。
2013年度の「ICT集合研修」である第3期講座では、募集定員30名で「テレワーク及びセキュリティの特別講座」を含む17回の「Officeソフトの基礎&活用講座」を「石巻信用金庫本店5階大会議室」で計画しました。講習だけでは不安という方のため、練習・自習できる場を石巻ルネッサンス館2階(NTTデータ会議室)に準備したのが特徴です。
「漁協向けIT出前研修」及び「ICT集合研修」では、講師の石垣雅輝氏及び阿部真司氏が中心となって活躍しました。阿部講師は具体的なイメージが湧くように、例えば“石巻保育園大運動会のチラシをつくる”といった身近なテーマを講座テキストに取り上げてわかりやすくなるよう工夫をしています。石垣講師は前期の受講生でした。そして第3期では、「漁協向けIT出前研修」を一手に引き受け、友人の補助講師と二人で乗り切ってくれました。
ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉などで印象に残っていることは?
2013年度から開始した浜地域への「出前形式のICTオープンカレッジ」では、機材の運搬等が毎回発生し準備等も大変でした。これには、補助講師をつけて乗り切りました。
1期講座・2期講座の結果を受け、自由度のある講座内容を心がけるためマイクロソフトの基本教材に加えて自前教材を準備したこともありました。また、習熟度の異なる受講生に対し、きめ細かく対応するために「NTTデータ社員(ボランティア)」及び「石巻専修大学の学生アルバイト」等によるチューター(個人指導)体制を充実整備したこともありました。台風26号が石巻地域を直撃していた今年の10月16日にも練習・自習に参加した熱心な受講生がいて、講師たちに本事業に対する期待と効果の大きさを感じさせ喜ばせました。
開講式の時、第1期及び第2期に活躍し、第3期も講師を担当する阿部真司氏が、本講座の「カリスマ講師」として紹介され登壇するや、研修室内には安堵感と期待感が溢れました。旧北上川に隣接する研修室の屋外では「旧北上川右岸下流護岸工事」が追い込み時期を迎え、大型建設機械による大音響がなっていました。それでも誰一人として文句を言いませんでした。参加者にとっては復興の槌音に聞こえるのだろうと思いました。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
地元と共に2012年から始めた「ICTオープンカレッジ事業」は2年間の活動成果により地元石巻専修大学及び復興大学の「地域復興支援ワンストップサービス・プラットフォーム事業の一つ」として定着しつつあると考えます。これまで、BHNテレコム支援協議会はこの事業の中核的な役割を果たしてきました。これからは、この中核的活動が地元に円滑に移行していけるように配慮していきたいと考えています。第3期講座に対する受講生の応募状況は募集定員を大きく上回りました。これに対処するために、地元石巻専修大学及び復興大学が中心となり、急遽第4期講座が2014年2月~3月に計画されています。