復興支援助成金

被災地域のお母さんたちが
自立するための食堂
ワタママスマイル

Focus22

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「ワタママスマイル」の菅野芳春事務局長に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

私は2004年ガーナで理数科教師として海外青年協力隊に参加しました。帰国して静岡で国際協力の組織づくりしていましたが、震災が起こり、被災された協力隊OBOGをはじめ被災者のために「何かしたい」という思いを強く持ちました。そこで元協力隊の有志によって『協力隊OV有志による震災支援の会』を組織し、石巻市渡波小学校の避難所で支援活動を始めました。
石巻市からの依頼で渡波小学校避難所では炊き出しを行っていましたが、避難者は2,000名を超えていたので追いつかず、被災者にも手伝ってもらうことにしました。途上国で実施している、賃金を与えながら自立を促す“Cash for work”の手法を被災地でも実施することにし、20名の有償ボランティアを被災者の中から募集しました。
渡波小学校避難所は2011年10月に閉鎖となりましたが、渡波小学校で炊き出しを続けてきた地元渡波のお母さんたち(ワタママ)4名と配達担当の2名の合計6 名でNPOワタママスマイルを立ち上げました。避難所で習得した大量調理のノウハウを活かそうと、被災したラーメン屋さんの建物を借りて翌月に『ワタママ食堂』をオープンし、日替わり弁当と惣菜の販売を開始しました。
私自身は、渡波小学校の避難所の閉鎖後も、ワタママスマイルの活動を継続して支援することにし、住民票を石巻に移しました。協力隊OV有志による震災支援の会では代表として、ワタママスマイルでは事務局長として活動しています。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

ワタママ弁当は高齢者向けに野菜の煮物などが中心のメニューで、毎日買いに来る方もおり、一日300食程度を販売していました。仮設住宅などに移って、食事が提供されなくなり、特に一人暮らしの高齢者は避難所よりも栄養状態が悪くなった方も少なくありませんでした。そんな高齢者がなじみ客になり、高齢者の健康管理にも役立っていました。食堂まで来られない方には宅配も行い、また石巻で活動するボランティアにも手作り感があると好評でした。
『ワタママ食堂』は地元の高齢者を中心に親しまれてきましたが、2013年3月末に建物の解体が決まりそれまで営業を続けましたが、惜しまれながら5月末に解体となってしまいました。現在は新店舗の建設に向けて準備をしています。

ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉など、印象に残っていることは?

新店舗の用地決めには、時間がかかりました。食堂に適当な場所があっても、震災で建築制限があったり、持主が見つからない土地もありました。あるいは持主が見つかっても、土地への愛着が強く、賃貸借に踏み切れない方もありました。9月にようやく土地の手当てがつき、契約を済ませました。
新店舗の設計は、テレビ番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」の2012年年間大賞を受賞した瀬野和弘氏が担当してくださいました。木造平屋、敷地は20坪で、NPOのサスティナライフ森の家の手により、宮城産の木材100%で建設される予定です。完成後は配食を中心に行いますが、店舗内に喫茶スペースを設け、食堂でも食事がとれるようにします。また、石巻を訪れる方への語り部スペースとしても利用することにしています。
食堂で働いていたメンバーは現在旅館などで仕事をしていますが、年明けに戻り、新店舗オープンは2月末の予定です。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

青年海外協力隊では、経済的にも精神的にも自立するための支援が基本です。被災地についても同様。3年間配食の支援を続ければ、石巻市で高齢者配食事業を行う資格がとれます。お弁当の宅配サービスでは、社会福祉協議会と協力して仮設住宅の高齢者の見守り支援を行っていく計画です。
ワタママスマイルでは、お母さんたちの就労機会として手仕事を提供しています。ガーナの布やバティックを使ったオリジナルバックなどの制作も始めました。被災者の支援だけでなく、途上国の支援にもなります。缶バッチやTシャツ、うちわなどのオリジナル商品も販売しています。収益は活動資金にあてていますが、今後は商品数を増やし、収益向上を目指していきます。
ワタママスマイルは渡波(ワタノハ)のママ(ワタママ)がいつも笑顔で元気に生活できることを願って名付けたものです。ワタママスマイルの活動が地域のお母さんたちの自立につながるようサポートしていきます。

『NPOワタママスマイル』webサイトはこちら

このページのトップへ