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復興支援助成金
桑茶づくりで地域の再生を促す
日本ハビタット協会
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「日本ハビタット協会」の篠原大作さんに、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。
日本ハビタット協会は、紛争や災害、都市化、貧困などによって悪化した居住環境に住む世界の人々を支援する「国連ハビタット(国際連合人間居住計画)」のパートナー団体として2001年に設立されました。国連ハビタットとともに、国内外の悪化した居住環境の改善に取り組み、人々が安全で安心して暮らせる街づくりを推進しています。これまでアフガニスタンやカンボジア、ラオス、インドネシア、パキスタンなど、海外で活動を展開してきました。
国内では中越地震の際に支援活動をした経験がありましたが、東日本大震災では発生直後に日本ハビタット協会の支援団体であるハビタットフレンズ仙台から連絡が入りました。被災地の深刻な被害と多くの方々が切迫した事態に直面していることを知り、2011年3月13日には緊急支援活動を開始しました。
これまでどんな活動をされてきたのですか。
震災の翌々日には、水や食糧、医薬品といった被災地で必要としていた緊急支援物資をハビタットフレンズ山形が集め、山形の物流会社の協力を得て仙台市若林区の七郷小学校と六郷中学校に届けることができました。これは協会設立以来に築いてきたネットワークのおかげであると、改めて私たちの活動をサポートしてくださっている関係者のことを頼もしく感じました。
これまで仙台市、陸前高田市などの避難所に計5回、延べ約3,350名に対し物資を届け、水道の復旧が遅れた南三陸町の志津川保育園などへ計7回、延べ約610名へ飲料水などを支援し、石巻市をはじめとした仮設住宅に暖房器具181点を提供しました。また雄勝小学校の子どもたちを元気づけるため、サッカー教室やクリスマス会を開催したり、女川の伝統芸能である女川港大漁獅子舞の復興活動を支援したりしてきました。
真の復興には、コミュニティの活性化と地域の再生が必要と考え、現在注力しているのが、仙台市若林区荒浜地区での「復興の桑プロジェクト」です。荒浜地区は津波で大きな被害を受けましたが、国や自治体の支援対象となっていない塩害被害を受けた多くの畑が荒廃し放置されています。農業を行っていた方々の大半は高齢者で、新しく別の職業に転職することが難しいうえ、畑作の仕事も再開できず、生きがいを失いつつありました。そこで私たちは、いっしょに桑を植えることにしたのです。桑は、栽培地を選ばず、一度植えると30年、一年に2~3回収穫できるとされ、ほとんど虫がつかず、食品や健康食品への応用ができて付加価値が高いなど多くの利点を持っています。昨年実験的に75本を植えてみたところ、無事に収穫して桑の葉茶を商品化することができました。今年はボランティアの手も借りて7000本を植えることに成功し、農家の方が中心となって「Champs du murier」(シャン ドゥ ミュリエ:フランス語で桑畑の意味)という名の農事組合法人を立ち上げました。
苦労されている点は。
今年は5~6月の気温が低く、台風も多く、予想した収穫量に至らず、農業の難しさを感じました。4年目くらいから収量が安定するそうですが、利益が大きくなるにつれ、組織の整備・強化も必要になるでしょう。その前にまずは販路を開拓しなければなりませんし、事業を軌道に乗せるためにやるべきことは数多くあります。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
販路が確立されれば、私たちの役割は終わりと思っています。事業の中心は、あくまでも地元の皆さん。現在いっしょに取り組んでいらっしゃる方々だけでなく、もっと多くの地元の皆さんとのコミュニケーションも大切と考え、収穫祭を行います。イベントには、女川港大漁獅子舞も招待して、収穫祭を盛り上げるとともに、みなさんの多幸を祈念したいと思います。荒浜地区では震災前は、トマトやキャベツなどいろんな野菜がつくられていました。そういった作物を復活させ、六次産業化できれば一番です。そのためにも、まずは桑で地域ブランドの確立を目指したいと思います。