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復興支援助成金
「すべてに繋がる」
交流スペースづくり
雄勝まちづくり協会
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「雄勝まちづくり協会」の畑山泰賢さんに、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。
雄勝まちづくり協会は、雄勝町のまちづくりへの貢献活動に挑戦している非営利団体です。 今年4月に開館したコミュニティ施設「オーリンクハウス」の運営をはじめ文化、自然、伝統、暮らし、コミュニティー、教養など様々な視点から雄勝にある豊かさを考え、文化的事業を通し、地域づくりや地域の活性化に貢献することを目的として数名の有志で発足しました。
当協会ではまず始めに、「皆で集まれるスペースが欲しい」といった町の人たちからの要望に応え、寄贈して頂いた『オーリンクハウス』の運営を始めました。
きっかけは2011年の6月ごろ。支援団体から、「建築資材を支援したい」という提案がありました。確かにありがたい提案と思ったのですが、そのころは瓦礫撤去などの復旧業務に追われ、返事を保留させてもらいました。施設の建設計画にようやく取り組み始めたのは、震災から1年経った2012年の春ころから。国内外から集まった資金をもとに工事が始まり、今年4月14日に開館しました。この施設は、世界中の人々の想いがリンクしてできた建物として「ALL LINK」を由来に「オーリンクハウス」と名付けました。国内はもちろんのこと海外からもご寄付を頂いたので、国内外に通じる名前を考えました。
私自身は、震災の時には社会福祉協議会に勤め、ボランティアの受け入れを行っていました。震災から半年間は、住民のニーズ調査とボランティアの受け入れおよびコーディネートなど、震災関連の業務に奔走していました。しかし、震災から1年が経ったころにはボランティアの数も減少し、マンパワーでできる復旧作業もめどがたち始めた2011度末に勤めていた社協を退職し、家業を手伝うかたわら思い切って雄勝の町づくりのために働こうと決意しました。
これまでどんな活動をされてきたのですか。
1年目は、住民のニーズ調査および瓦礫処理などの肉体労働のボランティアのコーディネートや炊き出しなど。2年目は、仮設住宅への支援や仮設商店の復興祭などのイベント企画、漁業再開のお手伝いなどを始めました。雄勝町は漁業が主幹産業であり、漁業の再開は雄勝町復興に欠かせない要因の一つでした。しかし、それにはあまりにも多くの船の修理をしなければならず、その作業にはクレーン車が必要なのですが、いまだに手に入っていません。それによって、いまだリースによる対応に頼らざるを得ず、漁業関係者の負担は増える一方です。また、震災から8ヵ月後には商店街ができて復興祭を毎月行うことを決め、市や商店街のイベントの企画運営に追われました。
今年は、イベントについては、会場となる場所の工事が始まったこともあり5月までは休んでいました。6月以降は復興祭を再開し始めました。今後もさらに魅力ある活発なイベントを展開するため商工会や仮設商店街のメンバーとともに考えていきたいと思っています。今年一番の大きな話題の一つは、先ほどもお話ししたように『オーリンクハウス』の完成です。オーリンクハウスのコンセプトは、住民の方が気軽に集まれる場所。クラッシックやアーティストによるコンサートを実施しました。代表理事の及川拓磨はミュージシャンで震災当初に被災地の支援活動をしていた際、知人の紹介で出会いました。その後、復興祭のイベントなどに50組以上のミュージシャンが雄勝に来てくれました。オーリンクハウスには、2011年11月から仮設コミュニティを支援するお茶会(移動カフェ)をしていた『縁』というコミュニティカフェを設置しています。その他、映画上映会や写真展示会、カルチャー教室なども行っています。この施設の良さは、地域を越えたコミュニケーションが可能なこと。また、町の外から来た人と雄勝住民との交流スペースにもなっていることです。
ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉などで印象に残っていることは?
一番の苦労は何と言っても人材不足。いろいろやりたいことがありますが、手が回りません。オーリンクハウスの敷地は、個人の土地でしたが所有者の方とお話させて頂き、住民のコミュニケーションの場として利用することに賛成してくださり、土地をお借りすることになりました。しばらくは雄勝町に足が向かなかったようですが、オーリンクハウスがオープンしてからは、娘さんの車で見に来てくれました。
わざわざ県外など遠方からお越しになる方も大勢います。実際に来てみて被災地の状況がよくわかった、雄勝硯や神楽、太鼓など雄勝町の伝統文化まで知ることができた、思い切って来てよかったと喜ばれるとやはり嬉しいものです。
先日、10名くらいの雄勝住民の方がカフェに集まりました。お住まいの仮設住宅が復興住宅の敷地となるため、復興住宅が建つまでの間、震災後の苦楽をともにした仲間が分散せざるを得なくなった最後の日に来てくれたのでした。とりとめのない話を1時間程度過ごしていかれましたが、カフェが役に立って嬉しく思いました。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
3年目に入り、アパートに移住したり、自力で自宅を再建する人も出てきましたが、ほとんどの方がまだ仮設住宅に入居したままです。3,000人以上の方が、石巻など雄勝町の外に住んでいます。1年目のアンケートでは、60%の人が雄勝町に戻りたいと回答していましたが、今は30%以下に減少しています。外で暮らす人が戻って来たとき、オーリンクハウスのような安心して過ごせるスペースができたことは喜ばれるし、楽しく過ごせる空間があれば戻ってきたいと思う人も増えるのではないかと思っています。また、行政など関係機関と連携しながら公民館事業の再開に向け、カルチャースクールなどの生涯学習の機会を提供するとともに、地域住民のコミュニティ形成における、きっかけと場所を提供していきたいと思います。
ボランティアの人に「何をすればよいですか」と聞かれると、「雄勝に住んでください」と答えます。笑われますが、本音です。定住人口は減ってもそこに住む人々が心豊かに暮らし、かつ町の外から多くの人が訪れる、そんな魅力あるまちづくりをしていきたいと思います。