復興支援助成金

釜石で、
世界に通じる人材を育てる
かまいしリンク

Focus07

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「かまいしリンク」の遠藤ゆりえ理事長に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

震災前、釜石市国際交流協会のコーディネーターをしていた仲間が集まり、支援活動を開始しました。法人名「かまいしリンク」の「リンク」には、「海外にもリンクしている、つながっている」という意味を持たせています。
震災の時、私はニュージーランドのオークランドにいました。東日本大震災の1カ月前にニュージーランドでも大きな地震が起きて心配されましたが、3月に日本で震災が起きて心配する側になりました。これまでも年に2、3回は津波警報がありましたが、最大でも1mくらいの津波。漁業関係者には死活問題だったかもしれませんが、一般の市民はさほど大きな問題として捉えていませんでした。情報はBBCやYouTubeからでしたが、地元釜石の陸中海岸グランドホテルの2階から3階にまで津波が到達する映像を見て、わが家も駄目だと覚悟しました。
2011年の10月に帰国しましたが、市民総出でボランティア活動を実施している状況で、自分たちもボランティア組織を立ち上げて、国際交流をしながら、地域の活性化、定住化の促進、世代を超えたコミュニケーションづくりなどにも取り組んでいくことにしました。2012年5月には、NPO法人の認可を取得。メンバーは、常勤12名、ボランティアが約30名います。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

昨年は東京の戸越銀座商店街にアンテナショップを開設しました。期間は2カ月間でしたが、売上が250万円になりました。驚いたのは、東京ではすでに被災地の情報が乏しく風化していたこと。自分たちのようなNPOが、継続して情報を発信していかなければならないと強く実感しました。また、支援に頼るのだけではなく、自分たちの力で地元を復活していく必要があると思いました。
地元では、釜石駅近くのフリースペースでの対話カフェや、仮設住宅での落語会を実施しました。国際交流事業の一環で、米国の高校生の受け入れも手伝い、地元の高校生と交流を図りました。初めはぎこちなかったのが、10日間を過ごして帰る頃には、お互い離れがたい様子でした。こうした交流の場を与えることが、子どもたちの良い経験になり、釜石の国際化の地道な種まきになると感じました。

苦労されている点は?
活動を通して、被災者の言葉などで印象に残っていることは?

困っているのは、人も資金も不足していること。
それでも、対話カフェにはさまざまな職業の方々が集まってくれました。このカフェは、社会的な地位を意識せずお互いに話を聞く会で、“これからの釜石の町づくりに必要なもの”をテーマに意見交換しました。参加していた行政の方から、「一市民として参加したので、むしろ本音を言えた。新鮮だった」という感想を頂き、話し合う場づくりの大切さを実感しました。
私たちはNPOであっても、常に活動の成果を意識しています。定量化できるものばかりではありませんが、成果の本質を考えながら活動しているのです。例えば、コミュニケーションスペースをつくる場合でも、箱モノをつくることだけで満足せず、そこに交流する実態が生まれているかを重視しています。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

2019年には、日本でラグビー・ワールドカップが開催されます。新日鉄釜石時代からラグビーが盛んだった釜石へのワールドカップ誘致に、市を挙げて取り組んでいますが、私たちも側面から支援できればと思っています。例えばワールドカップに向けて、市民に対して英会話教室を開いたり、インターネットで外国との橋渡しをしたり、国際化を促す取り組みを実施していきたいと考えています。ラグビー・ワールドカップ誘致に向けた商品開発としては、ラグビーボール型のクッキーやフィナンシェなどのお土産やノベルティづくりを提案しています。ラグビー・ワールドカップのみならず、子どもたちをはじめ釜石市民が国際的な体験をすることで、世界に通じる人材を育てていくことができればと考えています。

『NPO法人 かまいしリンク』webサイトはこちら

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