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復興支援助成金
人と人とを結ぶ
復興支援活動
立教大学 東日本大震災復興支援プロジェクト
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「立教大学コミュニティ福祉学部 東日本大震災復興支援プロジェクト」の松山真委員長(立教大学コミュニティ福祉学部教授)に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。
震災後、私自身教授を務めるコミュニティ福祉学部の専門性を被災地でどう活かすか考えました。震災直後よりも、半年程度が経過しコミュニティが形成された頃、われわれの専門性が必要性になると考え、まずは学部内で復興支援プロジェクトを立ち上げました。活動拠点を調査し、石巻、気仙沼、陸前高田の3カ所をピックアップ。また都内に福島から避難されてきている方々へ支援することとしました。
これまでどんな活動をされてきたのですか。
石巻では、以前からお付き合いのあった高齢者施設を支援しています。初めは『川開き』など、地域イベントのお手伝いから始めましたが、被災後移転した施設に学生が入ることで、施設と地域住民が交流する緩衝材となることができ、施設と地域のつながりをつくることができました。
気仙沼では、2011年9月から大島で子どもたちの学習支援を毎月実施しています。学校に限らず仮設住宅でも活動し、地域の方々とのコミュニケーションの輪を広げています。
陸前高田市では、避難所となっていた民家を家具や電化製品付きでお借りし、サポートハウスをオープン。2011年秋から、市内最大のモビリア仮設住宅で活動しています。イベントの手伝いや、サポートハウスに住民を招待して夕食会をすることで交流を進めています。4.5畳の仮設を出て、畳の上で大勢で食事ができると喜ばれています。
都内に原発避難地域から避難して来られた方々が入居されている公営住宅で、住民の方々と交流し共生できるよう、双方が参加できるイベントに毎月参加しています。
これまで各地に延べ80回以上派遣し、延べ680名の学生が参加しました。
ご苦労されたのはどんな点ですか。
学生と教員が共に、かつ安全・安心に、そして5年以上の長期にわたって活動できる場所を選ぶことです。幸い、3カ所とも、宿泊先、食事などが整っています。また、現地にある程度コーディネートをしてくださる方ができ、現地の様子を伝え、活動をサポートしてくださっています。学部として、学生は入れ替わっていきますが、できる限り長期に活動を継続したいと考えています。
特に印象に残っていることは?
コミュニティ福祉学部は、“いのちの尊厳”を学ぶために設立された学部です。被災地では、全く知らない人でも、名前も知らないうちから温かく迎えられる。「一緒に笑えるだけでありがたい。津波で全てを失ったけど、若い人が来てくれて一緒に食事をする、こんな生活もいいかなあ」と仰ってくださる。普段は成績だとか、容姿だとか、そんな評価しか気にしない学生が、ここでは一緒にいるだけでよい、存在してくれるだけでよいと、言葉に表して感謝してもらえるのです。“いのちの尊厳”を実感する体験だと思います。コミュニティ福祉学部の学生は、やがて人を支援する仕事に就きます。被災地の体験は、将来の仕事できっと役に立つことと思います。何かをしてあげるという上から目線ではなく、人にかかわる本質を体験していると思います。
陸前高田では、プログラムへの参加学生と仮設住宅の住民の間で、手紙や写真を交換する交流を続けています。メール世代の学生が、便箋選びから考える。仮設住宅の方は、津波で手紙や写真も全て失った方々です。学生からの手書きの手紙はとても喜ばれ、何度も繰り返し読んでいただいています。
活動も3年目に入りますが、何か変化はありますか。
お孫さんや料理などの話題が増え、少しずつ日常を取り戻しつつあることを実感します。またここでは何か困ったことがあると、地域の方々がサポートしてくれます。ボランティア活動をしているというより、こちらが助けられている感じがします。当たり前にお互いを助け合える関係が築かれています。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
私たちの活動の中心は、人間関係をつくること。いくらきれいな町ができても、人と人との関係が切れてしまっていては意味がありません。ここはもともと、人と人とが密に結ばれていて地域力の強い地域です。こうした住民同士の関係が壊れないようにしていきたい。主役はあくまでも住民。私たちは黒子に徹し、住民の仲介役、媒介になれればよいと考えています。今後、復興住宅などへの移転が進む時期がやってきます。その時に、コミュニティから取り残され、行き場を失った方々が孤立しないよう、人と人とを結ぶ活動を継続していきます。