- HOME
- 復興支援助成金
- 助成先紹介|2013年度
- Focus05
復興支援助成金
発達障がい児を地域で
支えるために
いわて発達障害サポートセンター えぇ町つくり隊
当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「いわて発達障害サポートセンター えぇ町つくり隊」の千葉寿美江さんに、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。
東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。
「いわて発達障害サポートセンター えぇ町つくり隊」は、教育・福祉・行政で働く仲間が集まり自閉症にやさしい町づくりをしていこうと、ボランティアで自閉症児者を支援している団体です。
震災が起き、集団生活を苦手とする自閉症をはじめ発達障がいの人たちが避難所生活をする上で困っていることはないか、自分たちができることをしようと3月末に陸前高田市に入り、避難所を回って、自閉症の子どもたちの支援を開始しました。4月には、岩手県の障害福祉課が被災地での統一調査を実施することになり、私たちも協力することになりました。約1カ月かけて障がい者の安否確認を行いましたが、震災から1カ月以上が過ぎ、避難所生活にも疲れが出始めていた頃で、「今頃になって」といった不満を漏らされることもありました。秋からは、「えぇ町つくり隊」のもともとの支援対象である発達障がい児を中心に支援を始めました。
これまでどんな活動をされてきたのですか。
発達障がいの理解を高めるためのポスター作りから始めました。加えて、陸前高田市の全ての保育所、小中学校を対象に保護者アンケートを実施。その結果、預かりや相談、理解を求める回答が多かったことから、発達障がい児のための施設『さぽーとはうす・すてっぷ』をつくり、預かりを中心とした事業を始めました。今夏には現在のプレハブ施設が完成し、1日3名の子どもたちを預かっています。対象としているのは幼児から高校生まで、1回500円のおやつ代を頂いて運営しています。
ご苦労されたのはどんな点ですか。被災者の言葉など、特に印象に残っていることは?
発達障がいの子どもたちは、ちょっとしたサポートでうまく社会と順応することができます。1対1であれば問題なく、集団が苦手な子どもが多いのも発達障がいの特徴です。また、急な変更に対応するのが苦手な子が多いので、あらかじめ変更があることを知らせておくだけで落ち着いてきます。
陸前高田では児童福祉サービス施設がなく、障がいのあるお子さんが放課後や長期休暇に利用する、預かり施設が必要でした。私たちが『すてっぷ』という拠点をつくったことで、関係者からは、発達障がいに対する情報が共有でき、また地域での理解度が上がるのではないかと期待されています。現在、福祉サービス事業所登録を申請中。登録が認められれば、財政面は安定します。ただ利用者にも負担が発生しますので、そのことを理解してもらえるか悩みどころです。
『すてっぷ』である日、ホットケーキを焼くのを教えたところ、家では何度も失敗していたのに、教わった手順通りに家でも試してみたらうまくいったと喜ばれたこともありました。学校、家庭、すてっぷの三者間で、その日の子どもの様子を共有する連絡帳を使っています。家庭での様子をメモして、学校に持っていく。先生が学校の様子をメモして、すてっぷに持ってくる。すてっぷでの様子をメモして、ご家庭に持って帰る。その繰り返しによって、家庭以外での子どもの様子がよく分かると保護者から喜ばれています。
時々、保護者から「育児のヒントが欲しい」とご意見を頂くことがあります。月に1回、横浜から精神科医を招き、保護者への相談会を実施。すてっぷへの送り迎えのちょっとした時間に、相談されていく保護者も少なくありません。
今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。
施設をつくったことで、被災地に雇用を生むことができました。すてっぷには地元採用の2名と、保育士1名が常駐しています。
障がいを持った子どもには、大人になっても継続的な支援が必要です。最近は、発達障がいのグレーゾーンと呼ばれる人たちへの支援も重要視されています。大人になって一般就労したものの、職場でのトラブルや人間関係がうまくいかず離職してしまう方が増加。ちょっとした理解と支援があれば、離職には至らないこともあるはずです。そういう人たちを地域で支えることが必要ではないかと思います。地元高校生のサポーターの要請を計画中。こうした福祉の仕事もあることを理解してもらい、次の担い手になってもらえればよいと考えています。子どもの障がい特性はさまざま。一人ひとりに合わせ、きめ細かい支援をしていきたいと思います。